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柏井壽さんが語る京都・おばんざいの流儀

月刊誌「一個人」4月号「京都で、飲む」特集企画②

京料理を構成する要素

 

「京料理」とは、質を充分に吟味した食材を(精進)、簡素な美しさを湛えた膳に(茶懐石)、雅で厳かな空気を感じさせ(有職)、絶えず進取の気性をもって(伝来)料理にのぞむ。この歴史的背景を柱に、一方で身近で新鮮な山の幸に遠来の海の幸に手を加え、潤沢な水を使って美味しさを表現したもの。
参考:柏井壽『京料理の迷宮 奥の奥まで味わう』(光文社新書)

――京都での料理屋選びのコツは?

 おばんざいと同様に「京料理」と看板に掲げる店は多いけれど、イメージ戦略であることがほとんどで、京都らしさの真髄に触れられるのかといえば疑問。SNSの情報も京都人が投稿しているものは少ないでしょうから、観光客、よその土地の人目線です。

 私は、宣伝文句や料理云々より料理人の心持ちを重視しています。京都で店を構えるいい料理人ならば、「京都に来てもらったからには、京都ならではのおいしいものを食べてもらおう」と思っているからです。煮物を食べると、お出汁の味がちゃんと効いているかどうかでその店の実力が分かります。

 とはいえ、味の好み、そしてお店の人との相性もありますから、ネットの評判よりも自分が楽しめる店を自分の勘を頼りに地道に見つけるのが一番。そして、いい店だなと思ったら京都へ行くたびに通って欲しいですね。顔見知りになると、お店の主人や女将さんを通して「ほんまもんの京都」が見えてくると思います。

――お店での流儀はありますか?

 京都人は食材の産地や酒の銘柄などあれこれ聞きません。おいしければそれでよし、という精神です。他の店と比較するような話もあまり好まれません。「よそはよそ、うちはうち」が京都流です。

※月刊誌『一個人』4月号(3月9日発売)より抜粋

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