ひとり飲みもOK!京都の夜は「路地裏」酒場へ②
【柳小路】そば 酒 まつもと(阪急河原町)
京都人が醸す空気のなか、素朴な料理に合う酒を楽しむ
『居酒屋 静』と同じ柳小路でもう一軒立ち寄りたいのが『そば 酒 まつもと』。 大きな柳がゆらめく小路の南端から入るとすぐに、白いのれんを掲げる店舗が目に入る。その風情にもう期待が高まる。
しかし、のれんをくぐる前に立ち寄りたいのが、店の斜め前に建つ「八兵衛明神」と書かれた小さな祠。8体のタヌキの置き物が愛らしい。柳小路の守り神とも言えるこの社は、京都に関わりの深い作家・森見登美彦の小説にも出てくるため、〝聖地巡礼〟に訪れる人もいるという隠れた名所だ。
ご挨拶をすませたら、いざ『そば 酒 まつもと』へ。のれんの隙間から中の様子がうかがえるので、初めての店には緊張するという人には好都合。酒を注文する人のみ予約ができるのだが、 全席を予約で埋めることはないため、空席があるようなら、ふらりと立ち寄ってみよう。
店内はカウンターのみ。穏やかな光を放つ照明、余計なものをそぎ落としたシンプルな空間。物静かな風貌の店主、 松本宏之さんの哲学を感じる空間でいただけるのは、そばと酒、そしてそれに合う一品だ。大学時代に東京、福井、 長野とそばの名店を食べ歩き、京都のそば屋で修業をした後、自身が好きなお酒も一緒に楽しめる店をと2013年に開店した。昼は12時から、午後は16時から開けるため、日が高いうちから杯を傾けられるのが嬉しい。
主役のそばについて語るのはいったんおいて、まずは日本酒の話から。松本さんがすすめるのは「秋鹿」(秋鹿酒造)。素朴な料理に合う味はもちろん、一貫造りなど、作り手の姿勢に共感を覚え、ファンになったという。常時種類ほど用意している。 そんな秋鹿にどんな料理を合わせようかと黒板を見ると、「秘伝豆のおひたし」「カブの浅漬け」と、期待を裏切らない酒を呼ぶ一品ばかりである。
松本さんによれば、路地の店で飲む楽しみは「地元人が多いこと」だと言う。 京都人と店主が作り上げる独特の空気感。『まつもと』にも観光化された店では味わえない〝素〟の京都がある。
ひとしきりお酒と料理を楽しんだら、 いよいよ締めのそばの登場だ。そばは産地を決めず、その時々で良いものを選んでいる。毎日使う分だけを営業前に店内で打ち、翌日に使うことは一切しないため、打ちたての味を楽しむことができる。つゆは甘さ控えめ。だしはカツオのみで、あっさりと仕上げてある。おすすめは「もりそば」。細めのそばがつるっとのどを通ると、爽やかささえ感じる。どんなに飲んでいても、 〆の一杯にあっという間にたいらげてしまうことだろう。
住所:京都市中京区中之町577-22
☎075-256-5053営業時間:12:00~14:00、16:00~23:00 日曜日のみ13:00~19:00※売り切れ次第終了
定休日:火曜日
阪急河原町駅より徒歩約3分