ひとり飲みもOK!京都の夜は「路地裏」酒場へ⑥
【膏薬逗子(こうやくのずし)】酒房 菜々(烏丸、四条)
新旧の歴史と文化が交差する路地ごと楽しみたい一軒
オフィスビルが立ち並ぶ四条烏丸の 辺りは、祇園祭の際に豪華な装飾品に飾られた山鉾(やまほこ)が建てられることから「鉾町」と呼ばれるエリアでもある。絶え間なく車が行き交う四条通から1本道を入ってしまえば、数は減ったとはいえ、まだまだ町家も残っている。
中でも京都らしい風情が楽しめるとして人気なのが「膏薬辻子」。四条通か ら南に伸びる道は途中で 度曲がっているため先が見えず、果たして入っていいものかと躊躇してしまう雰囲気が漂っている。
ちょっと変わった通り名は、踊念仏で知られる空也上人に由来するという。天慶元年(938年)、修行のためにこの地に道場を設けた空也上人は、天慶の乱で亡くなった平将門の霊を鎮めるため、道場の一角に塚を建てて供養をした。そこから、〝空也供養〟の名ができ、やがて発音がなまり、細い道を意 味する〝辻子〟と合わさって「膏薬辻子」 と呼ばれるようになったのだとか。
その膏薬辻子の終点・綾小路通寄りにあるのが、創業40年になる『酒房 菜々』だ。現在の店主・上田信人さんは2代目。 サラリーマンになったものの料理人へ の夢を捨てきれず、約3年前、脱サラして父の跡を継いだ。
店名である「菜々」は、もとは野菜料理をメインにしていたことから父が付けた。今は野菜と魚をメインに、肉料理もそろう。 いずれもできるだけよいものを安くとの思いから、毎日、上田さんが市場へ赴き自身の目で選ぶ。野菜は、付き合いのある西京区桂の農家から仕入れることもある。
野菜、魚、肉、店の魅力が実感できるとして、人気のメニューが一人鍋だ。 「軍鶏鍋」「和牛すき鍋」「天使の海老と牡蠣の寄せ鍋」もいいし、京都に来た気分に浸りたいときは「湯豆腐」「とろゆば寄せ鍋」もいいだろう。「鴨鍋」なら京鴨に金時ニンジン、水菜や大黒しめじなど京都の野菜も楽しめる。
「鴨鍋」に合わせるなら、京都の酒どころ・伏見にある東山酒造の「坤滴」 をおすすめされた。鍋の少し甘めのだしに対して、すっきりとした味わいが相性がいい。
鍋をアテに日本酒を傾け、時に上田さんとの会話を楽しむ——。そんなゆったりとした時間を過ごしにくるのは、 地元の人だけではない。京都に来た際は必ず立ち寄るという北海道からの常連客もいれば、膏薬辻子に最近できたホテルの宿泊客も少なくないという。
「日本だけではなく、世界中の人に会えるのが、この仕事のおもしろいところ」 と話す上田さんは、父の代にはなかった写真入りのメニューを作り、国内外からやってくる人たちをもてなそうと、今日も提灯の明かりをつける。
住所:京都市下京区綾小路通西洞院東入ル矢田町114-2
☎075-343-2422
営業時間:17:00〜23:00
定休日:日曜日
阪急烏丸駅、地下鉄四条駅から徒歩約8分