「財政支出を拡大すると、本当に経済は成長するのか?」アメリカと日本の財政政策の違い【中野剛志】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「財政支出を拡大すると、本当に経済は成長するのか?」アメリカと日本の財政政策の違い【中野剛志】

中野剛志「奇跡の経済教室」最新講義 第5回《最終回》

 

 バイデン政権の経済政策を動かしているのはジャネット・イエレン財務長官で、前にFRBの議長だった有名な経済学者です。彼女がFRBの議長だった2016年に行った講演では、すでに「積極的な財政政策をしないと経済成長しない」と明言しています。

 第4回で私も説明したように、積極的な財政政策によって需要を膨らませれば供給力もついてくる。彼女はこれを高圧経済(high pressure economy)と呼んでいます。常に需要が供給を上回っている状態をつくりだせば、みんなどんどん設備投資や技術開発投資をしたり、起業したりするので供給力が上がります。従って、積極財政でそのような状態をつくりだすべきだと、イエレンは2016年の時点で言っているわけです。

 日本では、財政出動について、よく経済学者や政治家の先生が「短期的にはいいかもしれないけど、単なるカンフル剤に過ぎないので、長期的には成長戦略は必要だ」と偉そうに言いますね。

 しかしジャネット・イエレンは「長期的な成長戦略のためにも、財政出動が必要だ」と言っているのです。

 日本が陥っているような「短期は財政出動、長期は成長戦略」というこれまでの考え方は間違いだ、と言ったのがイエレンで、そのイエレンが財務長官をやっているバイデン政権は、巨額の財政出動を打ち出そうとしています。

 

 それでは財政支出を拡大すると、本当に成長するのか?

 それに答えるため、1997年から2015年まで、OECD33ヵ国と中国について、財政支出の伸び率を横軸、GDPの成長率を縦軸にしてプロットを取ってみましょう。

 

 

 ご覧のとおり、きれいな相関が出ていますが、そのきれいな相関の原点のところにあるのが日本です。一体、どうしてくれるんでしょうね?

 

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中野 剛志

なかの たけし

評論家

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)など多数。


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