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消費増税も吹っ飛ばす破壊力。「MMT」(現代貨幣理論)の正体

トンデモ理論か、日本を救う切り札か。

■消費税は何を減らす?

 だから、税金を課して、消費や投資を抑えて、インフレを止めるのです。

 ただし、税金を重くし過ぎると、今度は、インフレの反対、すなわちデフレになります。

 この場合、税金は、物価を調整するための手段だということになります。

 他にも、税金には、重要な役割があります。

 例えば、高所得者により重い所得税を課すと、所得格差を是正できます。

 また、温室効果ガスの排出に対して、炭素税を課すと、温室効果ガスを抑制できます。

 このように、税金は、抑制したいものや減らしたいものに課すことで、経済をうまく調整するのに使うのです。

 ですから、税金は、財源確保の手段ではなく、経済の調整の手段として、必要だということです。

 これが、MMTの、最も初歩的な説明です。

 しかし、この最も初歩的な説明だけでも、破壊力が抜群なのです。

 例えば、先ほど説明したように、税金は、温室効果ガスの排出に対して課すと、温室効果ガスを減らせます。

 ということは、消費税は、何を減らすのでしょうか。

 消費に税金を課しているのですから、当たり前ですが、消費を減らすことになります。

 さて、今年、消費税を増税する予定ですが、そうなると、消費が減ります。

 消費を減らしたら、当然、不景気になり、国民生活は苦しくなります。

次のページ増税とインフレ・デフレの関係

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中野 剛志

なかの たけし

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)。  

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  • 剛志, 中野
  • 2019.04.22