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景気が悪化する中、朝日新聞がMMTを「曲論」と断定しました

アベノミクスでMMTを実践しているのに、どうして超インフレになっていないのでしょうか?

■そこで、原氏にお聞きします。

 日本はアベノミクスでMMTを実践しているのに、どうして超インフレになっていないのでしょうか? 2%という控えめのインフレ目標ですら、6年たっても、まったく達成できていないのですよ。

 

 要するに、日本は、超インフレを起こさずにMMTを実践できることを証明してしまっているのです。

 超インフレどころか、日本は、二十年もデフレのまま経済は停滞。普通に考えて、インフレを心配しているような場合ではないでしょう。そんなに超インフレが怖いなら、せめてデフレを脱却するまででいいから、財政支出をもっと拡大して、貧困対策でも防災対策でも教育政策でも、やればいいではないですか。

それとも、何かずっとデフレのままでいたい理由でもあるのでしょうか。

「財政支出を拡大すると超インフレになるから、国民はデフレを我慢しろ」というのは、それこそ「曲論」でしょう。

「武力をもつと戦争になるから、自衛隊はなくせ」という往年の左翼の「曲論」を思い出しますね。

「曲論」と言えば、原氏は、こんなたとえ話を持ち出します。

「想像してほしい。あなたのマンションの管理組合の理事長がある日突然、「これから毎月の管理費と積立金は半額でいい」と言い出したら――。「不足は銀行から借金すれば問題ない」と説明されても誰だってあり得ない話と考えるだろう。いま国家レベルで起きていることは、その種のことだ。」

 

「想像してほしい」って…。これは、さすがに、ひどい想像ですね。

 マンションの管理組合のような民間主体は、通貨を発行できません。だから、銀行からの借金が返せなくなることも、あり得ます。

 しかし、日本政府は、円を発行できるので、円建ての債務を返済できなくなることはあり得ません。日本政府とマンションの管理組合は、その点で、根本的に性格が異なるのです。

 この根本的な違いを無視して、国家財政を家計や企業会計になぞらえるというのは、経済学において、最も初歩的な間違いの一つです。こんな基本のキも知らずに、「マンションの管理組合の理事長がある日突然・・・」なんていう変な想像をしていれば、MMTが「曲論」に見えるのも当然でしょう。

 ちなみに、原氏のように、マンションの管理組合など、たとえにならないもので国家をたとえて想像すると、こんな恐ろしいことになります。

「想像してほしい。あなたのマンションの管理組合の理事長がある日突然、「これから、拳銃で武装する」と言い出したら――。「最近は、凶悪犯罪が多いから」と説明されても誰だってあり得ない話と考えるだろう。いま警察レベルで起きていることは、その種のことだ。」

 こんな変な想像をして、「警察官を丸腰にしろ」なんて言い出したら、危ないですよね。

 それと同じです。

 これは、冗談を言っているのではありません。変な想像をして「日本政府は財政破綻する」と思い込んだら、貧困対策、防災対策、教育、震災復興など、大事な財政支出すらもケチるようになってしまうのです。変な想像のせいで貧しく、苦しくなってしまうのは、われわれ国民なのですから、シャレになりません。

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中野 剛志

なかの たけし

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)。  

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  • 剛志, 中野
  • 2019.04.22