過去の栄光を偲ぶ美祢線の旅
幹線なのに普通列車のみ…ディーゼルカーで終点まで
厚狭川を2回渡り、久しぶりに市街地に入ると美祢駅に到着する。厚狭駅を出て30分少々かかったことになる。美祢線の中心駅らしく、10人以上が下車した。所用で訪れたような人、秋芳洞を目指す観光客など様々だ。秋芳洞へのアクセスは色々あるけれど、公共交通利用なら美祢駅から「アンモナイト号」というバスに25分乗るのが一番便利かもしれない。ちなみに、車両の後部ドア付近の整理券発券機脇に置いてある美祢線利用証明書をもらっておくと、入洞料1200円が900円に割り引かれるので知っておくと便利だ。
駅舎に面した1番線以外に2番線、3番線もあるけれど、そちらのホームは草茫々で使っていないようだ。駅を出るとすぐ右側には、貨車が大挙停車していたであろうヤードがあるものの、今や線路のみで貨車は影も形もない。分岐して宇部興産のセメント工場へ延びていく専用線もまだ存在しているけれど、もう使うことはないのだろうか? 貨物列車が頻繁に出入りしていた賑わいは過去のものとなり、残っているのは思い出だけである。
次の重安駅も左手に石灰石採掘の鉱山がある。かつては、この駅からも貨物列車が出ていたが、すでに廃止され、右手の貨物列車用の線路もほとんどが剥がされ雑草に埋もれている。
すぐ近くに道の駅がある於福(おふく)駅を過ぎると、分水嶺にあたる大ヶ峠トンネルに入る。くぐり抜け、渋木駅を出てしばらくすると、線路右手を流れる音信(おとずれ)川の対岸の小高い山に聳える大谷山荘が見えてくる。2016年にロシアのプーチン大統領が宿泊し、地元山口県出身ということで安倍総理との首脳会談の舞台となった旅館だ。歴代の首相や上皇陛下も泊まったことのある高級旅館で、長門湯本温泉の南端に位置する。この先、温泉旅館が林立し、かなり走ってから長門湯本駅に到着する。車内で賑やかに談笑していた中高年の女性4人グループはここで下車。温泉旅行のようだ。大谷山荘へは駅前からクルマで3分かかる。
この先は、山が遠ざかり、列車はのどかな田園地帯を走る。板持駅に停まった後、音信川を渡り、左手から山陰本線が近づいてくると、しばし並走して終点長門市駅に滑り込む。国鉄時代から続く伝統的な拠点駅の雰囲気を漂わせ、やはり国鉄形として有名なタラコ色のディーゼルカーがたむろしている。
山陰本線に乗り換えて一駅だけ延びている支線の終点仙崎や萩方面へ向かいたいところだが、接続列車はしばらくなさそうだ。山陰本線とは言うものの、このエリアはずいぶんさびれて美祢線と大して変わらない過疎路線となってしまった。とりあえず、列車旅は、ここで終わりにして小休止としよう。
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