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YES(はい) NO(いいえ)で答えない

安倍話法を考える〜安倍話法と安倍史観〜

政治家や官僚たちの不適切な発言や不正問題が明らかとなり、閉塞感が続く日本の政治——。憲政史上最長が見えてきた安倍首相。政治家・安倍晋三がここまで「強い」理由はどこにあるのか? また、安倍政権のどこが問題なのか?  書籍『「安倍晋三」大研究』(望月衣塑子&特別取材班・佐々木芳郎 著)より、政治家・安倍晋三を考えます。

長い長い答弁で相手をうんざりさせる

原作 佐々木芳郎 画 ぼうごなつこ

 YESかNOか二者択一の質疑に対しては、「YES(はい)」とも「NO(いいえ)」とも答弁しないというのも安倍話法の特徴だ。

 2017年5月8日 衆議院予算委員会で、民進党(当時)の長妻昭議員は「自民党憲法草案の主要な三点については、取り下げるのか?」を安倍首相に質問した。本来であれば安倍首相は「取り下げる」か「取り下げない」。あるいは三つのうち「取り下げる」ものと「取り下げない」ものを個別に示す答弁をすればよいはずだ。しかし、安倍首相が行った国会答弁は、どんなものだったのか。現職総理大臣のありのままの姿を知っていただくためにも少し長いが引用する。

長妻委員 (略)自民党の例えば9条、自民党憲法草案の国防軍とか、あるいは公共の福祉という文言を全て公益及び公の秩序に変えるとか、あるいは憲法97条の基本的人権の尊重という条文をばっさり全部削除する、こういう自民党の憲法草案についても総理といろいろ議論しましたけれども、今申し上げた三つの観点についてはもう取り下げる、自民党憲法草案の今の主要な三点については取り下げる、こういう認識でよろしいんですか。

安倍内閣総理大臣 いま、繰り返しになるんですが、私は、ここは内閣総理大臣として立っており、いわば私が答弁する義務は、内閣総理大臣として義務を負っているわけでございます。自民党総裁としての考え方は相当詳しく読売新聞に書いてありますから、ぜひそれを熟読していただいてもいいんだろうと。これは自民党……(発言する者あり)済みません、ちょっと静かに。(中略)つまり、それはもうそこに、いわば党総裁としてはそこで述べていますから、ぜひ党総裁としての考え方はそこで知っていただきたい。 ここで党総裁としての考え方をるる述べるべきではないというのが私の考え方でありますから、それはぜひそこでいわば自民党総裁としては知っていただく。あるいはまた、ビデオでそれは述べているわけでございます。(中略)

 結局、この長い長い答弁を止めたのは、浜田靖一委員長だった。

浜田委員長 総理、済みません、簡潔に願います。

しかし、安倍首相は諦めない。

安倍内閣総理大臣 簡潔に申し上げますと、結果を出す上においては、まさに議論をしていく上においてだんだんこれが収れんしていくという中における一つの考え方として申し上げたところでございます。どうかその点を御理解いただきたい、こう思うところでございます。

(2017年5月8日 衆議院予算委員会より)  

「さあ、いよいよ結論を言うのか」と思いきや、まったく関係ないことを、とにかくダラダラと話し始める。時間を使って相手を煙に巻く、ダラダラ話法だ。ちなみにこの答弁のなかで、「いわば」六回、「そこで」六回(中継では八回)、「まさに」五回(中継では六回)、「中において」二回が使われた。安倍首相が多用するこれらの言葉について、歴代首相の演説を研究してきた東照二 氏(社会言語学)はこう分析している。

「(安倍首相は)『まさに』や『つまり』といった言葉を使っている。これらの言葉は、同じ意味を繰り返したり、別の表現に言い換えたりする表現です。おそらく同じ意味を別の表現にして話をはぐらかそう、自分を良く見せようとしているのではないか」(二〇一八年六月二日 日刊ゲンダイ)

『「安倍晋三」大研究』(望月衣塑子&特別取材班(佐々木芳郎)著、KKベストセラーズ)より引用

望月衣塑子 (もちづき・いそこ)

東京新聞記者。1975年、東京都出身。慶應 義塾大学法学部卒。千葉、埼玉など各県警担当、東京地検特捜部担当を歴任。2004年、 日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑の一連の事実をスクープし自民党と医療業界の利権構造を暴く。社会部でセクハラ問題、武器輸出、軍学共同、森友・加計問題などを取材。著書 に『武器輸出と日本企業』、『新聞記者』(ともに角川新書)、『追及力』( 光文社新書 )、『THE 独裁者 国難を呼ぶ男 ! 安倍晋三』(KK ベストセラーズ)『権力と新聞の大問題』『安倍政治 100のファクトチェック』(ともに集英社 新書)など。

特別取材班  佐々木芳郎(ささき・よしろう)

写真家・編集者。1959 年生まれ。関西大学商学部中退。 在学中に独立。元日本写真家協会会員。梅田コマ劇場専 属カメラマンを皮切りに、マガジンハウス特約カメラマ ン、『FRIDAY』(講談社)専属契約、『週刊文春』(文藝 春秋社)特派写真記者、『Emma』(前同)専属契約を経 て、現在は米朝事務所専属カメラマン。アイドルからローマ法王までの人物撮影取材や書籍・雑誌の企画・編集・ 執筆・撮影をしている。立花隆氏との共著『インディオの聖像』(講談社)は 30 年のときを経て制作予定。

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