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MMTを否定すると、ハイパーインフレになるおそれがあります!

MMT批判こそが、ハイパーインフレを引き起こす!

 では、ハイパーインフレ(財政破綻)が起きるほどの巨大な震災が起きたら、どうするか。
 もし、そんな巨大な被害が発生したら、これはもう国家存亡の危機であり、財政政策がどうこうという問題ではありません。
 そんな大震災が起きたら、仮に財政健全化を達成していたとしても、ハイパーインフレは避けられないでしょう。

 南海トラフ地震によるハイパーインフレを避けたければ、(1)の答えで述べたように、地震の被害をできるだけ小さくすべく、今から公共投資を増やして防災対策をしなければいけないのです。
 それとも「手毬」さん、「巨大な震災が起きてもハイパーインフレにならないように、今からハイパーデフレにして備えておけ」とでも言うのですか?

 ちなみに、「手毬」さんは「増税は、平時でも難題だが、緊急時にやれることではない」とか言っていますが、東日本大震災の際は、すぐに復興増税が行われたのを忘れているようです。もっとも、当時はインフレにはなっていないので、まったく不必要な増税でしたが。

 ところで、なぜ「手毬」さんは、「南海トラフ地震のおそれがあるから、防災対策の公共投資を増やすべきだ」という当たり前の結論にならないのでしょうか?
 その答えは、MMT批判のテンプレ「いったん財政赤字を拡大したら、インフレを止められなくなるから」にあります。
「財政赤字は、悪」だと思い込んでいるから、防災対策のために公共投資を増やそうという結論にならないのです。

 しかし、防災対策が不十分であれば、南海トラフ地震の被害は、より拡大することになります。
 その結果、大規模な供給力の破壊と、膨大な復興需要の発生により、それこそハイパーインフレになってしまうかもしれません。
 つまり、MMT批判こそが、ハイパーインフレを引き起こすということです!

 しかも、財政赤字の拡大が招くインフレだったら、財政政策でなんとかできますが、大震災によるインフレは、それこそ簡単には抑制できません。しかも、物理的な被害によって大勢の人命が失われるので、取り返しがつかない。

 実際、2011年の東日本大震災までの十五年間、公共投資は、財政健全化を理由に削減され続けました。
 もし、財政支出を惜しまずに防災対策をしっかりやっていれば、東日本大震災の被害もより少なくできたでしょう。
 巨大災害を想定しない財政健全化こそが、東日本大震災の被害を大きくしたのです。
「デフレ下での財政赤字の拡大は問題ない」というMMTが理解されていれば、多くの人命を救うことができたのです。

 それなのに、「手毬」さんは、さんざんMMTを批判した挙句に、こんな捨て台詞を吐いています。

「8年前の東日本大震災では「想定外」という言葉が飛び交った。あんな弁解を、再び耳にしたくない。」

 偉そうに、よく言うよ。
 いい加減にしてもらいたいですね。
 ところで「手毬」さんは、MMTを批判しようとして、どうして、こんな異常な論理にはまってしまったのでしょうか。
 それは、おそらく、目にウロコがくっついたままだからだと思われます。

 目にウロコがあると、怖いですね。
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中野 剛志

なかの たけし

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)。  

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  • 剛志, 中野
  • 2019.04.22