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猛将でもネコが大好き! 「鬼島津」の知られざる一面

鬼と言われた武将も可愛いものにはかなわない? 島津義弘の意外なエピソードを紹介。 

 

戦国武将の手紙のやり取りを紹介した前回。今回は江戸時代に流行した武将人情物語と、島津義広の意外な一面を紹介します。

 

手紙や逸話に見る、有名武将の隠れた素顔

 

江戸時代の武士の間では、自分や藩主の先祖が活躍した戦国時代について知りたいという欲求が高まり、多くの歴史物語が書かれました。その中でも男女の色恋事情が積極的に描かれることはあまりないのです。つまり豊臣秀吉や伊達政宗が「異例中の異例」と考えるしかありません。

さて、前回お話しました島津義弘サン。ラブレター自体は「わりとショボイ」というと失礼ですが、期待はずれにおわったものの、「それでも」江戸時代では愛妻キャラだったみたいです。

『盛香集』という江戸時代後期の史料には、例の島津義弘と宰相殿という女性(のちに大恋愛を経て結婚したと思われる)が、いかにして出会ったか、恋に落ちたかのエピソードが描かれています。

『盛香集』によると、明石と宰相殿が呼ばれていた時の話として、彼女が大根を自宅の門前の清流で洗っている姿が、鷹狩りの道中の義弘の目に留まった……とあります。庶民的かつ家庭的な要素に上流階級の男性はキュンとしたのでしょうか。そして話かけるための口実でしょうか、「その大根をひとつ私にください」などと彼女に実に丁寧に話かけられた……という一節がつづきます。

非常につつましやかな表現ではありますが、不器用にでも愛を伝え合った、二人の様子が目に浮かぶようです! そして戦乱の世の生活感のあるエピソードは、現代だけでなく、江戸時代の読者にすらニーズがあったんでしょうね。

 

 

 

その点で島津義弘はエピソード大王です。たとえば彼は猫が大好き。時計がない環境で時刻を知るためと称して(猫は光の具合で黒目の大きさが変わる)「朝鮮の役」にも猫を何匹か連れて行きました。

無事、帰国を果たしたヤスとミケという猫たちが他界したときには、彼らのために通称・猫神社を作るという入れ込みようをみせているのです。気になる方、鹿児島の仙巌園をぜひお訪ねになってはいかがでしょうか。拙著の『愛と夜の日本史スキャンダル』(文庫版)もご一読、是非よろしくお願いいたします。

 

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堀江 宏樹

ほりえ ひろき

1977年生まれ。作家。大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒。大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。日本史、世界史に関する著作、連載多数。著書に『女子のためのお江戸案内』(廣済堂出版)、『三大遊郭 江戸吉原・京都島原・大坂新町』(幻冬舎新書)、『乙女の真田丸』(主婦と生活社)などがある。



 


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  • 2016.01.21