推定値115万人以上。世の中には「ひきこもりの壁」がある
「ひきこもり」を経験した発達障害カウンセラー・吉濱ツトムさんが「ひきこもり」の現実を語る。
99〜00年あたりがそうですね。
ちょうど就職氷河期(93〜05年)とかぶっていると言えます。本年3月公表された調査で20年以上ひきこもっている人の割合が、約20%弱(19・1%=約11万7000人)。
今40代のひきこもりの人たちはまさにその就職氷河期世代というわけです。
下の図を参照ください。
この「就職氷河期世代の歩んだ25年」を振り返ると、社会に出たときから現在まで、人生設計をする上でキャリアを積んでいくには非常に厳しい環境でした。
バブル崩壊の余波となる97年には名門の都銀や証券会社が倒産、06年にはワーキングプア問題、特に「高学歴者ニート」が増加しました。これも91 年の大学院重点化政策によって、受け皿のない博士たちが研究職に就けず、アルバイトしながら日々をしのぐという状況だったわけですよね。
08年には派遣社員の雇い止め問題。それ以降は正規・非正規の格差問題。
そして本年5月には、あの「世界のトヨタ」の社長までが「終身雇用制度は難しい」と言って物議を醸かもしました。この25年間は、「日本型雇用慣行=働き方」の大変革期だったことがわかります。その渦中で社会への入り口もまた出口も見えない環境に就職氷河期世代が晒さらされたことは事実です。
手っ取り早く言えば、準備する前に世の中のルールがコロコロと変わってしまっていたからですね。
もちろん、就職氷河期世代をひとくくりで「ひきこもり」と結びつけるわけではありませんが、あまりにも職業の選択肢、受け皿を社会が用意できなかったことも大いに関係していると思います。就職氷河期世代が「失ロ スジェネわれた世代」と表現されるのも頷うなずけますよね。
世の中が既得権を守ることに汲きゅう々きゅうとして就職氷河期世代を社会参加させづらくするほど「ひきこもりの壁」を〝結果的に〟作っていたことになります。
就職試験200社にエントリーして「全滅」だった場合、「お祈りメール(不採用通知)」をもらうたびに「私の何がいけないんだ!」と自分を責めてしまうのではないでしょうか。これでは、劣等感を増幅させてしまうだけです。特に真面目な人ほど「自分はできないヤツだ!」という頑丈な「劣等感の壁」を作ってしまいます。
それこそ「私の人生は何なんだ!」と叫びたくもなるかもしれません。
社会は「ひきこもりの壁」を若者に作り、そこに若者は「劣等感の壁」を上塗りする。その壁をぶち破るには、本当に社会が、具体的には雇やとい入れる会社が大きな理解を持たなければ、壊すことができないでしょう。
こうした時代環境が115万人を超えるひきこもりを生んだ背景にあることは、確かではないでしょうか。
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『今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気』
著者:吉濱 ツトム
年齢は関係ありません。
「ひきこもり」の改善はいつからでも間に合います。
今日からすぐにできるのです。
2018年内閣府の調査で40歳から64歳までの「ひきこもり」が、61万3000人。もしも彼らを支える親たちが「無職」になったら…。今、世間で不安視されているのが、「7040(ななまるよんまる)」問題。定年退職した70代の親が40代無職の我が子の世話をし、共倒れするリスクのことである。今や、その流れは「8050(はちまるごーまる)」問題にまでスライドされた。
では、どうすればいいのか?
著者の吉濱ツトム氏は、元ひきこもりで、自らのアスペルガーを克服し立ち直った発達障害カウンセラー。2000人を超える個人セッションを行った氏は、こう語る。
そもそも、なぜ「ひきこもり」となってしまったのでしょうか。
自分がダメ人間だから? 甘えているから? はたまた親のしつけが悪かったから?
いいえ、違います。その考えはいったん捨ててください。ひきこもりの多くは「発達障害」と関係しています。
ひきこもり者を治療するという発想を捨て、今の「生きづらさ」を回避し、自らの「長所」でカバーする。本書は、ひきこもりで苦しむ本人とご家族のみなさんといっしょに社会への小さな第一歩を確実に踏み出せる方法を考えわかりやすく解説します。
さあ、今すぐにはじめていきましょう。