私が《罠師》を選んだ理由。罠師のメリットデメリット
【第5回】都内の美人営業マンが会社を辞めて茨城の奥地で狩女子になった件
【毎日の見回りや止め刺し! 罠猟には意外なデメリットも!】
さて、コスト的にはお手軽な罠猟ですが、デメリットがいくつかあります。
毎日の見回りが大変な事と、罠だけでは止め刺し(かかった獲物にとどめを刺す事)ができない事でしょうか。
自分のかけた罠は、基本的に獲物がかかっているかどうかの見回りを“毎日”行わなければなりません。当然ですが、かけた罠の個数が多ければ多いほど大変です。私たちも一回の見回りに2時間ほどかけていました。仲間と協力し合いながら交代で見回りを行っていましたが、最初のころは慣れない山道にバテて動けなくなってしまったり、毎日見回っている山なのに迷子になって1時間以上迷ってしまったり、見回り中は予期せぬ出来事もたくさんです。山の中で、明らかに、自分より大きな4つ足動物の気配と足音にびっくりしてすぐさま引き返したこともあります(;・∀・)
そして罠に獲物がかかっていれば仲間や師匠に報告し、止め刺し、血抜き、獲物の持ち出し作業があります。山の中は携帯電話が繋がらない事も多く、
見回りで獲物確認
↓
下山して仲間や師匠に応援要請
↓
仲間と共にもう一度山奥のポイントへ
↓
険しい山道の中から100㎏近いイノシシの持ち出し……、
と短時間で山道を2往復した時は、身体がバキバキで足や腕、腰がもげるかと思いました……!
毎日の見回りが必要な理由は、もし非狩猟鳥獣(捕ってはいけない鳥獣)が誤ってかかってしまっていたら速やかに逃がさなければいけないですし、狩猟鳥獣がかかっていた場合も速やかに止め刺しをしなければなりません。動物愛護管理法の第40条1項では「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない」とあります。有害鳥獣もたまたま“人間”の社会生活に悪影響を及ばしてしまうだけで彼らに罪はなく一つの命であることに変わりはありません。そしてたまたま“人間”のほうが彼らより賢く、数も多く、強かっただけです。もしかしたら彼らにとって有害な私達“人間”が同じように狩られる時代もいつかは来るのかもしれません。私が狩猟で捕った動物は、100%私の都合で命を失います。罠にかかってしまった動物は自分の足がちぎれるくらいもがき苦しみ、のたうち回ります。私は本当に利己主義で、自分勝手な人間だと思います。それでも、罠にかかってしまって、痛くて、怖くて、苦痛な時間は、一刻も早く終わりにして解放してあげたいと思っています。
罠猟免許はあくまで動物を捕獲する為の免許なので、止め刺しがとても大変です。獲物に接近しなければいけないので、噛まれたり、罠が外れて逆襲されたりすることもあります。止め刺しで、大怪我をしてしまったり、時には亡くなってしまう罠師さんもいます。
私たちも初年度は自作の槍や棍棒を用意して止め刺しに挑みました。どこかで、自分たちは大丈夫だと自負していたんです。初めて罠にかかった100キロ級のイノシシと対峙した時に、自分たちの考えの浅はかさにすぐ気が付き、猛省しました。これは命のやり取り。向こうも死に物狂いで抵抗してきます。あんなオモチャみたいな武器ではどうにもできませんでした。本当に私たちの初めてかかった獲物が大型で獰猛なイノシシで良かったと思っています。
きっと、初めに小さいウリ坊がかかって、自分たちだけでなんとかできてしまって、変な自信がついてしまっていたら……いつか大怪我、もしくは命を落としてしまっていたかもしれないです。
師匠も『1年目は俺が(熟練ハンター)いない場所で一人で止め刺しはするな、まずは見て勉強した方がいい』と言っていましたが、止め刺しでの事故は免許を取ってから数年目の新人ハンター、もしくは20年、30年の超熟練ハンターに多いらしいです。どうか皆さん、本当に気を付けて下さいね!
【終わりに】
今回は私が罠師を選んだ理由、罠師のメリット・デメリットを私の経験を踏まえて綴らせて頂きました。
猟法によってそれぞれメリット・デメリットがあります。銃猟だけがハンターの道ではないんです。罠猟も網猟も立派なハンター!ご自身の目的、予算、生活スタイルに合わせて自分に合う最適なものを見つけてもらえたら幸いです。
次回は罠の種類や作り方、メーカーさんの罠についてもっと具体的にお伝えしていこうと思います。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。
- 1
- 2