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姫路城と1000円の価値

外川淳の「城の搦め手」第118回

 “白鷺城=白過ぎ城”とも揶揄される白鷺城、つまりは姫路城を撮影した。

 本来、天守の漆喰の白壁は、陽光に反射して光り輝くものだった。城主は、下々に対し、自身の力を感じさせるため、巨大な城を築き、その中心に聳え立つ天守を光り輝く存在として見せつけた。

 また、年月が経過して汚れが目立てば、壁を塗り直すことにより、輝きを取り戻そうとした。

 だが、江戸時代もなかばを過ぎると、諸藩は財政難から補修のための経費が計上でない状況に陥った。そのため、漆喰が落ちても放置せざるをえない状態で明治維新を迎えた城も少ない。

 このような時間的経緯のなかで、城の白壁は真っ白ではなく、くすんだ白というイメージが定着している。

 私は人混みが大嫌いなため、平成の大改修工事を終え、大盛況のなかの姫路城へ行くつもりはなかった。

 だが、自著の表紙に使用する予定のカットを撮影するため、「白過ぎ城」へ行く決意を固めた。

 当日の天気がよければ、新横浜から新幹線で姫路へという行程がベストではあるが、その週は、土曜日~日曜日には主催講座で広島へ行く予定があったため、月曜に姫路というプランを作成。

 日曜の夜には尾道市内に宿泊して銭湯に入浴。その日の天気予報では、午後から雨予報のだったため、早起きをして9時には姫路駅へ到着。

 姫路城探査にはベストの移動手段であるレンタサイクルを活用。平日の午前中のため、思ったよりも人手は少ないと思いつつ、白く輝く天守へと接近。

 時折、雲間から太陽が差し込むと、シメシメと思いつつシャッターを切った。

 

改修工事を終えた姫路城
小天守が14年前に修築された当時は白く輝いていたが、現在はくすみつつあり、大天守とは好対照。

 

 11時には空腹を感じたため、いったん食堂に寄り、姫路名物のおでん定食で腹ごしらえ。内堀の周囲を一周して12時には撮影を完了した。

初夏の日差しに輝く大天守
ご愛読への感謝を込め、お気に入りのカットを添付します。

 

北側つまりは搦め手より大天守を望む。

 

 これまで愛読して下さった方々と担当編集者に感謝します。

 次の更新が最終回となります。「続城の搦め手」の開始は、まだ検討段階ですが、概要が紹介できたらと思っています。

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外川 淳

とがわ じゅん

1963年、神奈川県生まれ。早稲田大学日本史学科卒。歴史雑誌の編集者を経て、現在、歴史アナリスト。



戦国時代から幕末維新まで、軍事史を得意分野とする。



著書『秀吉 戦国城盗り物語』『しぶとい戦国武将伝』『完全制覇 戦国合戦史』『早分かり戦国史』など。



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