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世界中で進む水道の民営化!! 今こそ日本の水道を見直すとき

日本の水が危ない④

 第一に、日本の水道料金は安い。国内だけをみれば水道料金が少しずつあがることへの不満もあるだろうが、国際的にみればその安さは圧倒的だ。

 国際水道連合のデータベースによると、2017年段階での100㎥当たりの水道使用料は、東京で211・49ドル(約2万2000円)、大阪で170・61ドル(約1万8000円)だった。これはロンドン、パリ、ベルリン、ニューヨークなど他の先進国の主要都市より、ブダペストやイスタンブールなどの新興国の水準に近い。これらの都市には水道事業が民間企業によって経営されているところも含まれる。物価水準に照らして考えれば、日本ではやや安すぎるとさえいえるかもしれない。

 

 第二に、安全な水を利用できる人口の割合で、日本は世界最高水準に近い。世界銀行の統計によると、2015年段階の日本では、安全な飲料水、下水システムにアクセスできる人口の割合がそれぞれ、約98・9%、100%だった。世界銀行の統計でいう「安全な飲料水」の定義には、ろ過装置などを設置した井戸なども含まれ、日本でも地域によっては井戸が利用されるところもあるが、ほとんどの人が水道の普及で生活用水に困らない状態にあることは確かだ。さらに、水道の普及には感染症の予防といった公衆衛生や海洋汚染の防止といった自然環境対策としての意味もあり、こうした面でも日本の水準の高さをうかがえる。

 

 そして最後に、日本の水道はメンテナンスの水準も高い。2008年の自民党「水の安全保障研究会」の最終報告書の資料によると、東京の水道における漏水率は3・6%で、当時ヴェオリアが水道を経営していたベルリン(5・0%)や、完全民営化を果たしていたロンドン(26・5%)を抑えて一位だった。

 このように質の高い日本の水道システムは海外からも評価されている。例えば2007年、トルコのイスタンブール上下水道局は、以下の項目に沿って世界13都市を調査した。

 ・水管理における行政資源の充足度(サービスを受ける顧客数など7項目)
 ・清潔な水の管理における効率と技術的インフラの充足度(料金請求に対する回収率など30項目)
 ・水質管理と監視の充足度(1日に採集される資料の数など13項目)
 ・下水管理インフラの効率と充足度(下水処理場の平均流水量など11項目)
 ・水管理における情報源の充足度(組織内部のコミュニケーションのレベルなど10項目)

 この包括的な調査で、東京は世界一と評価された。日本人の多くが当たり前に思っている日本の水道システムは、実は世界屈指の水準にあるのだ。

KEYWORDS:

『日本の「水」が危ない』
著者:六辻彰二

 

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 昨年12月に水道事業を民営化する「水道法改正案」が成立した。
 ところが、すでに、世界各国では水道事業を民営化し、水道水が安全に飲めなくなったり、水道料金の高騰が問題になり、再び公営化に戻す潮流となっているのも事実。

 なのになぜ、逆流する法改正が行われるのか。
 水道事業民営化後に起こった世界各国の事例から、日本が水道法改正する真意、さらにその後、待ち受ける日本の水に起こることをシミュレート。

 

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六辻彰二

むつじしょうじ

国際政治学者

1972年生まれ。博士(国際関係)。国際政治、アフリカ研究を中心に、学問領域横断的な研究を展開。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学などで教鞭をとる。著書、共著の他に論文多数。政治哲学を扱ったファンタジー小説『佐門准教授と12人の政治哲学者―ソロモンの悪魔が仕組んだ政治哲学ゼミ』(iOS向けアプリ/Kindle)で新境地を開拓。Yahoo! ニュース「個人」オーサー。NEWSWEEK日本版コラムニスト。


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