自衛隊をどうするのか?
誰が国を守るのか!?
清水 軍隊をなくしていくのは時間がかかります。適菜さんは憲法を変えるか、自衛隊をなくすか、どちらかしかないと言いますが、僕は時間がかかっていいと思うんですよ。この矛盾はある程度時間がかかったとしても、憲法に合わせていくように努力していくべきだというロマンを僕たちは持っています。そのためには、国民的合意も必要だし、北東アジアの情勢、北朝鮮や中国の海洋進出の問題、尖閣諸島の問題を考えなければならない。今の状況で、それができるとは思っていません。市民と野党の共闘でつくる国民連合政府では、自衛隊と安保は容認という立場です。
適菜 夢を大事にしたいという気持ちはよくわかりますが、夢と現実は違います。詩人や小説家、思想家が夢を語るのはなんの問題もない。しかし、政治家が扱うのは現実です。そこを突き詰めないとアジア諸国からも信用されないと思います。将来は平和になっていくだろうから、現在の矛盾はそのまま放置しておいてもかまわないという発想がよくわからない。
清水 適菜さんの指摘はわかります。これを言うと余計にごまかしたり、煙に巻いてるように思われるかもしれませんが、安倍政権の下で九条を守ろうという人たちは、ほとんど自衛隊の存在意義について議論しているわけではないんですよ。九条を守ることと自衛隊があることに矛盾を感じていない人たちが圧倒的なんです。安倍が自分の思惑の通りに、自分の理想通りに、軍国主義的な感じで変えていこうというのは許されない。でも、自衛隊員の人たちが、誇りを持って、活動できなくてもいいのかという安倍の脅しに屈して自衛隊を憲法に明記して、「軍隊として認めましょう」とは国民はならないと思うんです。
適菜 安倍の言っていることが支離滅裂だからこういう面倒な議論になるのです。そもそも、九条の三項加憲が、自衛隊の誇りになるわけがないでしょう。第二項で「戦力の不保持」を謳っているわけですから。要するに、法的にわけのわからない立場のままアメリカの戦争に巻き込まれるということです。軍としての立場を明確にしないと危険だとこれまで改憲派は言ってきた。だから石破茂が安倍の改憲を批判するのは当然です。まともに改憲について考えてきた人間からしたら安倍の改憲は論外です。
清水 筋としては石破氏の言う通りです。九条二項は削除しないと話が通らない。集団的自衛権を認めてしまったわけですから、九条の一項、二項とも矛盾している。われわれは立場が違いますが、安倍のような姑息なやり方に比べれば、普通のやり方です。安倍がひどいのは、自分の仲間内でぶち上げるでしょう。身内のメディアの懇話会などで発表して、反応を見て、既成事実を積み上げていく。それで総裁選に勝てば「信を得た」と言って国民に押しつけてくる。国民が安倍に投票したわけでもないのに。
適菜 いろいろねじれていますね。普通の改憲派である石破を、改憲反対と言っている人たちが安倍よりはマシだという理由で支持せざるを得ない一方で、九条の矛盾を固定化しようとしている安倍を支持する「改憲派」もいるわけですから。
清水 そもそも、緊急事態に酒を飲んでいるような赤坂自民亭に緊急事態条項を唱える資格なんてないんですよ。
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『日本共産党 政権奪取の条件』
著者:適菜 収、清水 忠史
日本共産党とは相いれない部分も多い。私は、共産主義も新自由主義と同様、近代が生み出した病の一環であると考えているからだ。日本共産党が政権を取る日は来るのか?本書で述べるようにいくつかの条件をクリアしない限り、国民の信頼を集めるのは難しいと思う。そこで、私の失礼な質問にも、やさしく、面白く、かつ的確に応えてくれる衆議院議員で日本共産党大阪府委員会副委員長の清水忠史さんとわが国の現状とその打開策について語った。
――――保守主義者・作家 適菜 収
作家・適菜収氏との対談は刺激的であった。保守的な論壇人としてのイメージが強く、共産主義に対して辛辣な意見を包み隠さず発信してきた方だけに、本当に対談が成り立つのだろうか、ともすればお互いの主張のみをぶつけ合うだけのすれ違いの議論に終始してしまうのではないかと身構えたのだが、それは杞憂に終わった。
――――共産主義者・衆議院議員 清水忠史