『水曜どうでしょう』ディレクターが語る「自分の人生の主導権を握ろう」
嬉野雅道さんの「納得」
人は怯えるからこそ攻撃するし、怯えるからこそ攻撃されもするのです。それがこの社会に生きる、人のありようのように思えます。きっとそうです。
でも、それがぼくらの生きていかねばならないフィールドなのです。
ぼくらは、ここで生きていくのです。
それなら出来るだけ幸福に。
そう考えるのは当然でしょう。
そのためにこれからどうするか。
そこを考え、判断し、行動に移すのです。
そのことの日々を、ぼくは「世渡り」と呼びたいのです。
〈肌を刺す冷たい北風が心に吹いても。突然激しい雨がこの身に降っても。我が身に迫る被害は出来るだけ最小限にくいとめて、少しでも自分が損をしないように、出来れば得をするように、「そのためにぼくは何をしよう。さぁこの先をどう切り抜けよう」 そこを考え判断する。そのことを「世渡り」と呼んでいるという嬉野さん。
「この広い世界を、人は、綱渡りや、つり橋を渡るように用心深く渡っていくのです。だから、世渡りには経験を通して身につけた技術が生きてくるのです」と、言葉を続けます〉
人生はゲームのようなものなのです。それなら楽しく乗り越えて生きたい。そう考え始めるのは自由です。
生き物は、この世界を自分の力で渡っていくのです。それは生まれたばかりの野生の熊や狐の子どものような心境でしょう。
この星で生きていくんだという真剣な気持ちです。
「ぼくはひとりなんだ。ひとりで生きていく」真剣な気持ちはそこに湧き上がってくるのです。
その先で待っているのが勇気です。
生きてやると思えてくるファイトです。
ぼくたち人間だって、この星で生きていく以上、熊や狐の子たちと同じ野生の気構えがなければいけないはずなのです。
熊の子や狐の子がお母さんの真似をして、自分でも狩りを覚えるように、人もまた、やってみて、失敗して、たくさん怪我をするようなことです。
自分にも狩りができる本能があるんだということは、やってみたとき、初めて身をもって知るのです。
それは、あらかじめ、自分に授けられている力があることを知る瞬間です。
多分それが「納得」です。
人生は足していくための道のりというよりは、自分がすでに持っているものに気づくための道のりであるはずと、ぼくは思います。
だからこそ、人生は体験してみないといけないのです。
そんなことを、徒然に思う今日でした。
この4月、新社会人になったあなた。そして既に社会人となって久しいあなた。でも、どれだけ時間が経とうと、ぼくらの置かれている状況は何も変わらない。老いも若きも、この世界を懸命に「世渡り」する状況は何も変わらない。みんなただ、生まれてからずっと、おんなじこの道を歩いている者たち。
ときに、ひとりで、歩いている者たち。それが、我ら生命の本領です!
なんか、そんな感じ。
この続きはまたどこかで。
それでは本日も、それぞれの持ち場で奮闘されたし。
諸氏の健闘を祈る。
嬉野雅道
嬉野雅道(うれしの・まさみち)
1959年生まれ。佐賀県出身。『水曜どうでしょう』カメラ担当ディレクター(HTB 北海道テレビ放送)。大泉洋主演ドラマ「歓喜の歌」ではプロデューサーを務める。安田顕主演ドラマ『ミエルヒ』では企画、プロデュースを担当。同ドラマはギャラクシー賞テレビ部門優秀賞、文化庁芸術祭賞優秀賞など多くの賞を受賞した。2019年3月道内放送開始のHTB開局50周年ドラマ『チャンネルはそのまま!』ではプロデューサーを務めている。愛称は「うれしー」。著書に『ひらあやまり』、『ぬかよろこび』(KADOKAWA)、藤村忠寿との共著に『仕事論』(総合法令出版)など。最近はnoteで月刊マガジン『Wednesday Style』をはじめたり、ユーチューバーになったりと、活動の場を広げている。最新情報は、各種SNSをご確認ください。
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『生きづらさを抱えるきみへ』
著者:withnews編集部
2014年に朝日新聞社がスタートしたニュースサイト「withnews」内の1コーナーが「#withyou」です。この#withyouは2018年4月に始まった「生きづらさを抱える10代」に向けた企画で、「いじめ」や「不登校」、「DV」などを経験したことのある著名人(タレント、ミュージシャン、YouTuber、クリエイター等)が自らの体験談をサイトに掲載したものです。その体験談をひとつにまとめたのが本書。新生活が始まる中、「学校に行きたくない」「死にたい」といった悩みを抱え苦しむ人に、著名人たちが「自分も学校にいかなかった」「自分も不登校生活をしていたけど、今はしっかりと生活できている」「学校に行くだけがすべてじゃない」「好きなことをずっとやり続けていれば大人になっても暮らしていける」といった“安心できる”提案をしています。学校や友達付き合いに悩んでいる人に“学校に行きたくなければ行かなくても全然大丈夫”“今の時代、生きていく道はたくさんある。自ら死を選ばないで”という輪を広げていくことをいちばんの目的とした一冊です。