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元ラグビー日本代表が解説。こう観れば「スクラム」は面白い

ラグビーワールドカップ日本大会が開幕

いよいよ明日、ラグビーワールドカップ日本大会が開幕。日本代表はロシア代表と相まみえる。体格が大きいロシア代表。ポイントとなるのはフォワード同士の力比べ「スクラム」だろう。ただ観る側としてはいまひとつ「スクラム」はなんのためにあるのか、どこを観ればいいのか、わかりづらい。そこで元日本代表のプロップ山村亮氏に解説してもらった。
同じく元日本代表で、現在は解説者として活躍する大西将太郎氏の新刊『ラグビーは3つのルールで熱狂できる』より抜粋。

 

■スクラムの見えないチカラ

大西将太郎(以下大西) ラグビーにおいて勝敗のカギを握る重要なプレーを学んでおきましょう。それはスクラムです。

ライター福田(以下福田) 自チームと相手チームのFWが8人ずつ組み合って押し合うセットプレーなんですよね。

大西 そうです。ただスクラムは実際に組み合うFWでないとわからないことも多いのです。まあぼくにも弱点はあるということです。そこで、スクラムのスペシャリストに来ていただきました。気は優しくて力持ちな「りょうさん」です。元チームメイトで同世代ながら現役で活躍を続ける本当にすごい男なんですよ。それではバトンタッチ!

福田 ちょっと、ちょっと、展開強引すぎ!

山村亮(以下山村) はじめまして! ヤマハ発動機ジュビロの山村亮です。2003年、2007年と、2大会連続でW杯日本代表に選出された〝名〟プロップ(PR)です。

福田 自分で〝名〟って言っちゃった。そしてデカい! 大西さんも大きいですけど、山村さんはそれより一回りも二回りも大きい。山村さん、それではよろしくお願いします。プロップって、最前列でスクラムを組むんですね?

山村 はい。スクラムは前から3人、4人、1人という3列でフォーメーションを組むんですが、1列目左の背番号1番と右の3番をプロップと言います。ぼくは右プロップ。相手チームの屈強な1番と2番に挟まれるので、スクラムを組むFWのなかでいちばん身体的負担が大きいポジションです。だからこういう体なんですよ。はっはっはっ!

福田 (ずいぶん陽気な人だな……) でもスクラムって、正直いうと単に集団でうごめいているだけのようにも見えるんですけど。どんな意味があるプレーなんですか?

山村 観ている側からするとなかなかわかりづらいかもしれませんが、勝敗を左右する非常に重要なプレーです。スクラムで押し勝つことでその後の攻撃で優位に立てるんです。
 たとえば、こちらがスクラムで5メートル押せば相手チームのバックスラインをその分下げることができます。押し切ったところでBKにボールを出せばかなり攻撃に余裕が生まれます。また相手スクラムを圧倒すればペナルティもとれますからね。事実スクラムが突破口となって勝つ試合を何度も経験してきました。

福田 えっ、スクラムで試合に勝てたりするんですか!

山村 2015年の日本選手権決勝でヤマハがサントリーと戦い、初優勝した試合がまさにそうでした。ぼくはこの試合でリザーブだったんですが、一進一退が続く残り15分の緊迫した場面で出場したんです。当時ヤマハのスクラムコーチで、いま日本代表チームのスクラムコーチをつとめる長谷川慎さんから「スクラム行ってこい!」と送り出されて。結果交代して1本目のスクラムで圧倒し、ペナルティをとることができたんです。あれでダメ押しができました。
 ちなみにその試合はラストプレーもスクラムでした。試合終了のホーンがなったあとにぐいっと押して、ペナルティをとって勝ったんです。いやー押しまくりましたよ、はっはっはっ!

福田 (味方だと頼もしいけど敵に回したら恐ろしそうな人だな……)そ、そういえば、前回W杯の南アフリカ戦も、日本はスクラムから逆転のトライを決めたんですよね。

山村 ラストプレーですね。前半は南アフリカにスクラムで押されていましたが、あの場面で、同点になるキックではなくスクラムを選んだのは相手の体力も落ちていく中で「ここは押せる」という自信があったのでしょう。
 また、スクラムで押し勝てれば、「行けるぞ!」と気持ちが乗ってチーム全体の士気が上がるんです。逆にスクラムで負けると、プレッシャーがかかってメンタルに影響する。特にFWの士気に大きな影響を与えます。最後の局面、何度か組み直しがありましたが、徐々に優勢になっていきました。それによってFWが精神的優位に立ち、そこからBKに余裕を持って展開できたことが大きかったのではないでしょうか。

福田 なるほど、メンタルに与える影響も大きいんですね。スクラムがこんなに重要なプレーだとはわからなかった。

山村 世界的にみても、ここ2~3年スクラムを重視するチームがどんどん増えてきました。その中でぼくの所属するヤマハは清宮監督、長谷川コーチの方針で、先駆けてスクラムにこだわってきた自負があります。

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大西 将太郎

おおにし しょうたろう

ラグビー元日本代表、解説者。

地元東大阪市の布施ラグビースクールでラグビーを始め、啓光学園高3年で全国高校大会準優勝。高校日本代表では主将を務め、スコットランド遠征全勝の快挙を達成。ジャパンラグビートップリーグ(リーグ戦)は通算143試合に出場。2007~08シーズンは「ベスト15」、「得点王」、「ベストキッカー賞」の三冠に輝く。日本代表には同志社大4年時(2000年)に初選出、以降、2008年のサモア戦まで通算33キャップ(試合)に出場。2007年ワールドカップフランス大会のカナダ戦では終了直前に同点ゴールを決め、12-12と引き分けながらも日本代表のワールドカップ連敗記録を13で止めた。 2016年現役引退。現在はJSPORTSやWOWOWのラグビー解説者として、また2019年ラグビーワールドカップの認知活動および、ラグビーの普及活動のため全国をまわっている。


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  • 大西 将太郎
  • 2019.09.12