元ラグビー日本代表が解説。こう観れば「スクラム」は面白い
ラグビーワールドカップ日本大会が開幕
■スクラムは「姿勢」に注目すべし
福田 ラグビー界の中でもスクラムが再評価されているということか。ただ、山村さん、実際観る側からするとやっぱりスクラムは、あそこで何が起きているのかわかりづらいんです。初心者は何に注目すればいいですかね?
山村 それは、ズバリ「姿勢」です。
福田 えっ! 相手チームをどれだけ押しているかじゃなくて?
山村 もちろんそれもありますが、押したか、押されたかはあくまで結果です。そのプロセスにおいて一番大切なのが姿勢です。ぼくらFWがスクラム中に何を考えているかといえば、極論「いい姿勢を保ち続ける」ことなんです。
8人全員が地面と平行に背中を保つ姿勢をとれていれば、いいスクラムが組めている証拠。そのまままっすぐに押しまくり、押し切ったところでBKにボールを出すなりペナルティをとればいい。逆に、相手の圧力に負けてしまうと、背中が丸まって8人の姿勢がバラバラになります。
福田 背中がスクラムの優劣のバロメーターってわけね。
山村 そういうことです。なのでスクラムが始まったらFW陣の姿勢に注目してください。もし相手のプロップの背中が丸まっていたり、2列目のロックの膝が高かったりしたら、それはこちらの圧力が上回っているということです。試合自体にも期待が持てるでしょう。
福田 ちなみに、日本代表のスクラム力ってどうなんですか? 今回のW杯のグループリーグで対戦する国のFWは、どこも体がすごくデカいと聞きました。ロシアとかもFWが強力だって。
山村 たしかに、体格だけを見れば日本は不利かもしれません。しかし、スクラムの面白いところは、「体が大きい=強い」とは限らないことです。大きいに越したことはありませんが、いくら大きくても8人の意識がバラバラだったり姿勢が高かったりすると、いいスクラムは組めません。
福田 へえ~、大きければ有利というわけじゃないのか。
山村 ぼくが代表時代に戦った国のなかで、もっともスクラムが強いと感じたのは2003年大会のフランス代表なのですが、彼らも飛び抜けて体が大きいわけではありませんでしたからね。ただまとまりがすごくて、2列目のロック、3列目のフランカーを含めた8人全員の力がぐっと乗ってきました。日本代表も当然体は大きくありませんが、4年前も専任コーチのもと、強力なスクラムをつくり上げ健闘していました。現日本代表も長谷川コーチがつき進化したスクラムが組めているように見えます。
福田 技術も必要なプレーなんですね。今回の日本代表もまとまって世界を押してほしい! 山村さんありがとうございました。
(『ラグビーは3つのルールで熱狂できる』より構成)
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