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世界の水市場が活発化! 加速する民間参入!!

日本の水が危ない⑥

 これは水道事業も例外ではない。世界経済フォーラムで水問題を話し合う「水資源グループ」のメンバーには、飲料・食品大手のペプシやネスレ、マッキンゼーなどのコンサルティング企業、そしてIT大手のシスコなどとともに、ヴェオリアも顔を並べている。後述するように、水道事業には異業種の参入が増えているが、その当事者が集う水市場グループでの議論をもとに、世界経済フォーラムは2018年に世界の水問題に対応する大方針「グローバル・ウォーター・イニシアティブ」を打ち出した。ここでは、世界的な水の需要の逼迫を改善するため、関連する機関などと連携する「民間セクターのチャンピオンたちを特定し、動員する」ことが目指されている。

 

 世界的に水需要が高まっていることは確かだ。しかし、ここで重要なのは、世界経済フォーラムでは「水道民営化」にともなうこれまでの問題が全く触れられないまま、むしろひたすら民間参入に向かってアクセルが踏まれていることだ。そして、それは「世界のリーダーたちの意見」として認知されやすい。

 グローバル・ウォーター・イニシアティブのプロジェクトリーダー、キャリー・スティンソン氏は、人工知能(AI)や機械類がインターネットを通じてつながるモノのインターネット(IoT)といった最新技術を導入することで、「水をめぐる課題に変革的な解決策を提示できる」と強調する。技術革新の成果を投入することは、効率化を進めるうえで重要だろうし、IT企業などの参入を促すことにもつながるだろう。とはいえ、技術面の進化だけ強調し、情報公開の不足や説明責任の不備について語らないことは、これらのいわばアナログな、しかしより根本的な問題を覆い隠すことにつながる。

 このように、ひたすら民間参入を促そうとする潮流は、新自由主義の台頭によって「水道民営化」が推し進められた1990年代から大きく変わっていないどころか、むしろ加速しているとさえいえる。

KEYWORDS:

『日本の「水」が危ない』
著者:六辻彰二

 

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 昨年12月に水道事業を民営化する「水道法改正案」が成立した。
 ところが、すでに、世界各国では水道事業を民営化し、水道水が安全に飲めなくなったり、水道料金の高騰が問題になり、再び公営化に戻す潮流となっているのも事実。

 なのになぜ、逆流する法改正が行われるのか。
 水道事業民営化後に起こった世界各国の事例から、日本が水道法改正する真意、さらにその後、待ち受ける日本の水に起こることをシミュレート。

 

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六辻彰二

むつじしょうじ

国際政治学者

1972年生まれ。博士(国際関係)。国際政治、アフリカ研究を中心に、学問領域横断的な研究を展開。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学などで教鞭をとる。著書、共著の他に論文多数。政治哲学を扱ったファンタジー小説『佐門准教授と12人の政治哲学者―ソロモンの悪魔が仕組んだ政治哲学ゼミ』(iOS向けアプリ/Kindle)で新境地を開拓。Yahoo! ニュース「個人」オーサー。NEWSWEEK日本版コラムニスト。


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