韓流ブームが突如として終焉を迎えた理由
2010年代初頭の大ブームはどこへ
■大統領の行動で日本の韓流ブームが終焉
日本は韓国と大きく事情が異なっており、韓国政府のようにエンターテイメントのコンテンツ輸出にこだわらなければならないほど、経済的切実さはない。したがって韓国と比べてエンターテイメント業界に対する支援額は少ない。
例えば、2008年度の韓国政府の文化振興予算は日本円換算で約1169億円で、日本の1018億円よりも多い。国家の総予算額が少ない韓国の国家予算比では、韓国のそれは日本の7倍の規模であった。
その後、日本政府も2010年には1020億円、2011年には1031億円と微増してはいるが、国家予算に対する比率では、韓国は日本の7倍の支出をキープしていた。
国民の税金を使う巨額の国家予算が注ぎ込まれると、支出に見合うリターンが求められるのは必然だ。そのため、タレントたちを、確実に利益を上げる輸出商品と見做す、ドライな商取引感覚が前面に出てくるようになる。
そうなると、韓国の30倍以上ある日本の音楽市場は格好の戦略目標だ。
その一方で、日本のエンターテイメント市場も、行き詰まりを見せていたのが実状であった。
日本の音楽産業としては、レンタルビジネスの定着やインターネットの普及による楽曲の配信などもあって、従来のメディアとしてのCDの売り上げが、1988年の5879億円をピークに、10年後の1999年には2460億円と、たった10年で半分以下にまで落ち込んでおり、まさに危機的な状況にあった。
その対策には、素人に近い歌手や芸人、俳優を新人アイドルとして、大量販売する戦略を取ったのである。
その結果、人気の定着を待たない、実力派アーティストを育てない、第一印象のみに頼る使い捨て的な新譜の大量発売をする薄利多売主義が蔓延した。
この戦略による音楽の低価格化の状況下では、日本人アーティストより安価な韓国人アーティストを輸入した方が、明らかにビジネスリスクが低くなる。
また、韓国人アーティストは、ある程度までの基礎的育成はなされていることで、輸入する日本側にとって先行投資の経費が省け、コストパフォーマンスが良いというメリットがある。
このようなマネージメント側の、典型的なデメリット回避によって、日本市場もK–POPなどの韓流ブームを呼び起こす基本的な条件が整っていたのである。
ブームのきっかけをつくった韓流ドラマも、同じような理由で、日本のメディアにとってはビジネスの上で極めて魅力的に映り、多くの作品が輸入され放映されたのだ。
一方、韓国側でもビジネスとして韓国人タレントを日本に輸出することが多く、日韓ともウィンウィンの状態にあった。私もソウルで日本芸能界と韓国の橋渡し的な仕事を頼まれる機会も多くなってきた。
だが、2012年、当時の李明博(イミョンバク)大統領周辺では任期末期になって国会議員であった実兄が企業から不正献金を受け、大統領自身も私邸の土地を不正入手したなどの疑惑からさまざまなスキャンダルが取りざたされ、政権の人気が急速に落ちて行った。
韓国では政権の人気が低下すると、必ずと言っていいほど過激な反日発言が政権中枢部から起きる。
かつて在日二世でもあった李明博大統領は、「日本は過去の謝罪や反省は不要」とまで言い、歴史問題などでの配慮もあった。だが政権末期には徐々に強硬姿勢を示すようになり、これまでの日韓間での暗黙の了解を無視し、大統領による竹島上陸を敢行した。そのうえ慰安婦に対して天皇の謝罪を求める発言など、日本人の感覚からすれば、とても受け入れられない侮辱的な発言を行うようになった。
日本国内では嫌韓感情が高まり、それまで堅調に伸びていた韓流ブームが、突如として終焉を迎えた。韓国大統領の行動が日本国内でのK–POPビジネスの、大きな転換をひき起こす原因となったのである。
余談だが、当時付き合っていた韓国人の彼女との間で、何となく心の齟齬ができ別れる羽目になってしまった。韓国寄りでも、日本寄りでもない私の、煮え切らない態度に彼女が嫌気をさしたようだ。
何事にも白黒ハッキリとつけなければ、気持ちが収まらないネイティブ韓国人と、日本育ちの在日の感覚の違いがボタンの掛け違いになったのだと思う。
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『韓流アイドルの深い闇』
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