住宅ローンの「審査」は何を審査しているのか
話題の不動産プロ集団“全宅ツイ”による不動産コラム⑤
私は不動産業界のプロ集団「全宅ツイ」の金主部に所属している金融アスペ君と申します。普段は某金融機関で「ストラクチャードファイナンス」という仕事をしております。
以前は金融リテール最前線で住宅ローンのお仕事に携わっていたこともありますので、今回は一般の皆様が関心を持っているであろう「住宅ローン」について書きたいと思います。
ネットで検索をすると「●●銀行の住宅ローンてどうよ?」「金利は固定か変動か?」「住宅ローン 不動産大技林」というような結果が多くヒットしました。しかし、それらの解説は他の全宅ツイの方やFPの方にお任せするとして…私は住宅ローンの「審査」について解説したいと思います。
住宅ローンを検討中の方や、ローンの審査がわからないという若き不動産戦士の方のお役に立てれば幸いです。
なお、これから解説する内容は全て民間の金融機関を前提にしている上、多分に私の経験を元にしております。
Ⅰ.住宅ローンとは?
住宅ローンとはひとつの「融資商品」として完成されているものです。基本的には以下の条件があります。
●金利は変動(固定金利は特約)
●最大1億円まで
●購入物件に抵当権を設定
●返済は給与収入から
●居住用物件に対するローン
●団体信用生命保険に加入
上記の条件を満たすことを前提として、パッケージングされたローン商品となっているのです。
Ⅱ.住宅ローンの審査とは?
住宅ローン審査=スコアリング審査となります。
この審査手法は企業向け融資の審査とは異なります。企業の「決算書」に代わるものです。いわゆる定量審査というものですね。
定性的な審査に関しては個人信用情報に問題がないかを審査しています。スコアリング審査と債務者ポイント、そして購入物件ポイントから、与信の総合点数をはじき出して審査する手法です。
「〇〇点以上は可、〇〇点以下は否」というように極めて機械的に審査を行っています。これは住宅ローンがパッケージングされた商品であること、そして、この方法であれば、多くの案件を効率的に審査することが可能なためです。
1.債務者のポイントとは?
スコアリング審査における債務者のポイントは大きく分けて3つあります。
② 勤続年数
③ 年収
①の「勤務先の与信」というのは、債務者が勤めている会社が問題ないかどうかをチェックしています。住宅ローンは会社からの「給与で返済することが前提の融資」ですので、勤めている会社が安全かどうかは重要な項目となります。
銀行によって違いますが、会社の売上高や純利益、資本金の額や上場・非上場などがファクターになってきます。業績の安定している上場会社に勤めていれば問題のない項目です。
②の「勤続年数」は債務者がひとつの企業にどれだけ安定して勤めているかを見ています。審査時点で与信が高い企業に勤めていても、転職を繰り返している人であれば、将来にわたって年収の維持が難しくなってしまう可能性が高いと判断しているからです。
こちらも銀行によって違いますが、概ね3年以上勤めていれば問題ないと思います。
③の「年収」については各銀行間で審査基準にバラつきがあります。下限を設けていない銀行もあれば、年収300万円以下はスコアがつかない(0点)場合もあるようです。
なお、年収の基準は昨年度の税込年収となります。
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