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「五輪よかった!」の爽快な構造【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」31

2020東京五輪閉会式での「爽快」な花火の模様。

◆世論の壮大な逆転劇

 

 2021年の夏、わが国ではコロナの感染拡大がかつてないペースで進む一方、東京オリンピックが一年遅れで開催されました。

 

 ご存じのとおり、今回の五輪をめぐっては否定的な見解も多かった。

 なにせ開催準備がゴタゴタ続き。

 メインスタジアムとなる新国立競技場の設計は途中で白紙撤回されましたし、エンブレムのデザインも盗作疑惑のあげく変更となります。

 

 2019年には、JOC(日本オリンピック委員会)の会長を長らく務めた竹田恆和氏が、招致をめぐる贈収賄疑惑が持ち上がったこともあって辞任。

 2020年暮れには、野村萬斎氏が率いていた開閉会式の演出チームが解散。

 20212月には、組織委員会の森喜朗会長が失言の責任を問われ辞任。

 同3月には、開閉開式の演出統括を引き継いだ佐々木宏氏が、やはり失言の責任を問われ辞任。

 開幕4日前の719日には、開会式の作曲を担当することになっていた小山田圭吾氏が、過去の言動を批判され辞任。

 前日の722日には、開閉開式のショーディレクターだった小林賢太郎氏が、これまた過去の言動を批判され解任。

 開会式の公式プログラムは発売中止となりました。

 

 総崩れではありませんか。

 加えてコロナのパンデミックです。

 そのせいで開催が延期されたわけですが、2021年になっても、コロナは収束の気配を見せなかった。

 

 20215月の時点で、読売新聞が行った世論調査では、じつに59%が開催中止を回答。

 6月でも48%は中止と答えています。

 

 717日〜18日、大部分の競技を無観客で行うことが決まった後で朝日新聞が行った調査でも、55%が開催反対と答えている。

 どう見ても、祝福された大会ではなかったのです。

 

 ところがお立ち会い。

 いったん開幕するや、日本人選手のメダル獲得があいついだこともあって、世論は一気に「五輪をやってよかった!」「たくさんの感動をありがとう!」へと切り替わった。

 壮大な逆転劇と言わねばなりません。

 

次のページ社会が「統合失調」となった夏

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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