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生活に困るほどお金がなくなった時、まずすべきこととは?【沼田和也】

『牧師、閉鎖病棟に入る。』著者・小さな教会の牧師の知恵 第10回


なぜ人を傷つけてはいけないのかがわからない少年。自傷行為がやめられない少年。いつも流し台の狭い縁に“止まっている”おじさん。50年以上入院しているおじさん。「うるさいから」と薬を投与されて眠る青年。泥のようなコーヒー。監視される中で浴びるシャワー。葛藤する看護師。向き合ってくれた主治医。「あなたはありのままでいいんですよ」と語ってきた牧師がありのまま生きられない人たちと過ごした閉鎖病棟での2ヶ月を綴った著書『牧師、閉鎖病棟に入る。』が話題の著者・沼田和也氏。沼田牧師がいる小さな教会にやってくる人たちはどんな悩みをもっているのだろう? 今回は「生活に困るほどお金がなくなった時、どうすればいいのか?」。沼田牧師自身、貧困の不安を抱えながら過ごしていた時期があったという。そのときの経験も踏まえて語ってくれたこと。


※イメージ

 

 今回は、お金の問題について取りあげてみたいと思う。お金と宗教というと、両者は互いにもっとも遠いものであると思われがちである。また、お金と宗教とを結びつけて語ろうとすれば、ただちに「汚らわしい」、「欲にまみれて生臭い」と言われそうだ。

 ところが聖書には、お金(というか経済)について、かなり具体的な書き込みがなされているのである。たとえば借金に関して、こんなルールが定められている。

 

 「もし同胞が貧しく、自分で生計を立てることができないときは、寄留者ないし滞在者を助けるようにその人を助け、共に生活できるようにしなさい。 」(レビ記 25:35 新共同訳)

 

 「もし同胞が貧しく、あなたに身売りしたならば、その人をあなたの奴隷として働かせてはならない。 雇い人か滞在者として共に住まわせ、ヨベルの年まであなたのもとで働かせよ。 その時が来れば、その人もその子供も、あなたのもとを離れて、家族のもとに帰り、先祖伝来の所有地の返却を受けることができる。 」(同 25:39-41)

 

 「ヨベルの年」というのは50年に一度やってくる年のことで、ようするに借金がリセットされる年だ。土地もそこに生ずる稔りも、そこで働く人間も、みんなもとは神のもの。だから、神ぬきに人間のあいだだけで貧困の連鎖が生じてはならず、その原因となる負債は50年に一度リセットされなければならないのである。このルールが当時のユダヤ人社会でどの程度実効力を持っていたのかについては諸説あるようだ。しかし、それが神の言葉として聖典に刻み込まれ、人々の記憶に受け継がれてきたことは事実なのである。

  

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沼田和也

ぬまた かずや

牧師・著述家

日本基督教団 牧師。1972年、兵庫県神戸市生まれ。高校を中退、引きこもる。その後、大検を経て受験浪人中、1995年、灘区にて阪神淡路大震災に遭遇。かろうじて入った大学も中退、再び引きこもるなどの紆余曲折を経た1998年、関西学院大学神学部に入学。2004年、同大学院神学研究科博士課程前期課程修了。そして伝道者の道へ。しかし2015年の初夏、職場でトラブルを起こし、精神科病院の閉鎖病棟に入院する。現在は東京都の小さな教会で再び牧師をしている。ツイッターは@numatakazuya)

 

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  • 沼田 和也
  • 2021.05.31