ビールの泡の向こうに北海道開拓史が見える ~北海道に乾杯~
ワイン、ビール、ウイスキー… 北の大地が育んだ歴史と味わい②
■開拓使が産業化を目指した北海道のビール醸造
歴史を感じさせる赤レンガの建物が、透明感のある青い空と鮮やかなコントラストをなしている。
現在はサッポロビール博物館として使用されているこの建物は、もともとは1890年(明治23)に札幌製糖の工場として竣工したが、後に札幌麦酒会社(サッポロビールの前身)が買収し、原料の大麦を麦芽にする製麦所に改修。以来、60年間にわたって使われ続けた建物だ。
出迎えてくれたのは積み上げられたビール樽。「麦とホップを製す連者ビイルとゆう酒に奈る」と書かれていた。1876年に行われた開拓使麦酒醸造所の開業式での記念写真のサインを復元したものだという。
北海道のビール醸造の歴史は、北海道開拓の歴史と密接に関連している。
明治新政府は1869年、北海道に開拓使を設置。以来、30工場以上におよぶ開拓事業を手掛けてきたが、その中にはビール醸造も含まれていた。
当時の開拓使長官・黒田清隆は、北海道の気候、土壌が麦作に適しているとのお雇い外国人ケプロンの意見を入れ、ビール大麦の育成と地元産利用を命じた。
大麦は1880年に初めて全量を道内産で賄うことができ、札幌に設けられたホップ園では試行錯誤の末、1881年に開拓使麦酒醸造所で使用するホップの全てを道内産で賄うことに成功した。こうして本格的な日本のビール醸造の歴史が幕を開けるのだ。
ビールの歴史を学べば、やはりその味が恋しくなる。ありがたいことにサッポロビール博物館では、できたて直送のビールを味わうことができる。定番「サッポロ生ビール黒ラベル」、北海道限定生ビール「サッポロクラシック」、そして創業地である札幌開拓使麦酒醸造所で造られる「開拓使麦酒」など、それぞれに異なる味わいを飲み比べることができる。忘れてはいけないのがサッポロビール園で食べるジンギスカンだ。ビールで乾杯すれば、それはもう格別だ。
KEYWORDS:
『サッポロビール博物館』
開拓使館2・3階 ケッセルホールで味わうジンギスカンとビールは格別。
北海道札幌市東区北7条東9丁目1-1
☎011-748-1876
営11:00~20:00(受付時間 10:00~17:30)
㊡年末年始・臨時休館日
https://www.sapporobeer.jp/brewery/s_museum/
【立ち寄り処】
『月と太陽BREWING』
こだわり派のビール好きが集う「月と太陽BREWING」。一番人気は店仕込みのオリジナルクラフトビール。1カ月に2~3回のペースで新商品が登場する鮮度抜群のクラフトビールは、訪れるたびに新しい出会いがある。ハーフパイント(250㎖)561円~。3テイスティングセット1120円、5テイスティングセット1527円。
北海道札幌市中央区南3条東1丁目3番地
☎011-218-5311
営17:30~24:00(月~土) 17:30~23:00(日) ※7月~9月の土日祝は15:00~
(休)不定休
http://moonsunbrewing.com/
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