高橋ひかるの休業でざわつく、スレンダー芸能人のダイエット&健康事情 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

高橋ひかるの休業でざわつく、スレンダー芸能人のダイエット&健康事情

「痩せは正義」「ぽっちゃりはイヤ」から「ぽっちゃりは善」に!?

 古いところではまず、浅丘ルリ子だろう。その35キロ前後(身長は156センチ)という軽量は、メディアが力士などの巨体を表現する際「浅丘ルリ子●人分」などという表現で活用されてきた。若い頃から食も細く「丼ものを完食するのが夢」だと言っていたが、おそらく今もその夢はかなえられていないのだろう。

 映画黄金時代の日活に勤めていた女性の知人からは「指が細すぎて、電話のダイヤルを回すのも大変そうだった」という話を聞かされたものだ。その口調は皮肉を含んでいたが、79歳の現在も精力的に女優活動を続けているところを見ると、柳に雪折れなしというタイプに思える。

 やや時代を下れば、松本伊代がいる。デビュー当時は38キロ(身長156センチ)で、72センチというバストサイズが衝撃的だった。バックで踊る女子二人組のほうが太く見えるという遠近感を超えた構図も話題になったものだ。

 浅丘ほど少食ではないものの、好物は豆腐。今も食卓に出すことが多く、夫のヒロミがそれを愚痴ったりしている。アイドル時代、細すぎて子供も産めないのではといわれたりしたが、立派な二児の母である。

 その一方で、松本の同期の中森明菜や堀ちえみはデビュー後、ダイエットによって標準体型から痩せ型になった。このふたりはともに、ここ数年、体調不良に悩まされている。また、松本とは事務所の後輩にあたる本田美奈子は天然の痩せ型に思えたが、38歳で病死した。若い頃はかなりの偏食家だったようで、それが災いしたのだろうか。

 偏食とはちょっと違うが、桐谷の前にスレンダー芸能人の代表格だった中島美嘉は、時期や時間帯による食べる食べないのムラが激しいことを告白している。それがよくなかったのか、痩せることでなりやすくなる耳管開放症を患ったりした。

 とはいえ、人間は本来、飢餓には強くできている。激痩せを経験した芸能人の大多数が、何事もなかったように復調しているのはそういうことだ。前出の宮沢りえしかり、榎本加奈子しかり。ともに、出産もしている。

 榎本ほどではないが、同時代のアイドルシーンを彩った広末涼子もかなり細かった。一昨年、出演したテレビ番組で当時の体重が判明。じつは彼女、ハタチくらいのときに芸能界がイヤになり「誰かを傷つけたり、誰かに嫌な思いをさせないで仕事がなくなる方法」として激太りを敢行したのだという。暴飲暴食により、15キロ太って52キロに。つまり、37キロ(身長161センチ)だったわけだ。

 そこまで痩せているようには見えなかったのは、中学時代、陸上の走り高跳びで県2位になったほどのスポーツ少女だったからだろうか。その後も「奇行」で騒がれることはあったが、体調は崩すことなく、今は三児の母だ。

 なお、このエピソードはネットで大いに話題になった。「広末の激太りは私の激やせ」「太った体重が52キロってその体重になりたい」そして、なかにはこんな声も。

「わたしの生きてる世界と軸が違うのかなって」

 そう、芸能界はある意味、別世界なのだ。にもかかわらず、最近は世間の常識を芸能人にも当てはめようとしすぎるきらいがあり、こうした体型をめぐる問題にもその傾向が見受けられる。スレンダー芸能人に対する、批判めいた指摘もそのあらわれだろう。

 そこには世間でしばらくのあいだ「痩せは正義」「ぽっちゃりはイヤ」という感覚が優勢だったおかげで、その反動というべき「ぽっちゃりは善」「痩せは悪」という感覚が勢いを増しつつあることが影響している。しかし、体型に善も悪もあるだろうか。医学上の確率として、病気になりにくい体型は存在するとしても、それは必ずしも個人個人には当てはまらない。芸能人に限らず、体型はあくまで「個性」としてとらえられていいはずである。

 そんなわけで、それぞれの体型が尊重されるような、スレンダー芸能人が叩かれないような風潮がもっと浸透してほしいものだ。そして、高橋ひかるには今回の件を糧にして、芸能人さらにはひとりの人間として役立ててくれることを願う。

KEYWORDS:

『痩せ姫 生きづらさの果てに』
エフ=宝泉薫  (著)

 

女性が「細さ」にこだわる本当の理由とは?

人類の進化のスピードより、ずっと速く進んでしまう時代に命がけで追いすがる「未来のイヴ」たちの記憶
————中野信子(脳科学者・医学博士)推薦

瘦せることがすべて、そんな生き方もあっていい。居場所なき少数派のためのサンクチュアリがここにある。
健康至上主義的現代の奇書にして、食と性が大混乱をきたした新たな時代のバイブル。

摂食障害。この病気はときに「緩慢なる自殺」だともいわれます。それはたしかに、ひとつの傾向を言い当てているでしょう。食事を制限したり、排出したりして、どんどん瘦せていく、あるいは、瘦せすぎで居続けようとする場合はもとより、たとえ瘦せていなくても、嘔吐や下剤への依存がひどい場合などは、自ら死に近づこうとしているように見えてもおかしくはありません。しかし、こんな見方もできます。

瘦せ姫は「死なない」ために、病んでいるのではないかと。今すぐにでも死んでしまいたいほど、つらい状況のなかで、なんとか生き延びるために「瘦せること」を選んでいる、というところもあると思うのです。
(「まえがき」より)

オススメ記事

宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

瘦せ姫 生きづらさの果てに
瘦せ姫 生きづらさの果てに
  • エフ=宝泉薫
  • 2016.09.10