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教育現場からの「NO」が広がる、パラリンピックの学校観戦プログラム

第92回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■感染対策も引率も…現場からの「NO」が増えている

 同じく会場になっている千葉県でも、熊谷俊人知事は学校観戦について「しっかり評価する。世界中のパラアスリートのプレーを通して、パラリンピックの意義を子どもたちが受け取り、共生社会を実現してくれると信じている」と語っている。
 しかし、千葉県内では観戦のキャンセルを決める学校が出ているとの情報もある。教育委員会レベルでは政府の方針に従っても、学校レベルでは従わない動きが始まっているようだ。

 学校レベルで学校観戦の実施を決めても、子どもたち個人として観戦を拒否する動きもある。「子どもと話し合った結果、参加しないことにした」と、ある保護者は言う。学校として学校観戦を実施しても、欠席する子どもたちがいる状況は避けられないようだ。

 こうした状況のなかで学校観戦を実施する学校現場レベルの負担は軽くはない。「感染対策を行ったうえ」とはいえ、どこまでの感染対策が用意されるのか不明瞭だからだ。
 政府や自治体、教育委員会が引き受けるのだろうか。それにしては、具体的な話が見えてこない。結局は、引率することになる教員に任されることになるのだろう。
 学校内であっても、マスク着用や手洗いなど感染対策に教員は神経をすり減らしている。学外に出て、子どもたちの想定外の行動も予測されるなかでは、完全に教員の目が行き届くとは考えにくい。そうなると、教員の負担は重くなる。冒頭の教員の声が切実なものとして聞こえてくる。

 だからこそ学校として、または個人として学校観戦をキャンセルを考える動きになっているのだ。東京都の教育委員が反対しているのも、そうしたことを考慮してのことだと思われる。
 今後、政府や知事の無責任さが問題にされていくに違いない。

 注目すべきは、今回のことで政府の方針に黙って従うだけではないという動きが出てきたことではないだろうか。具体的には、東京都教委の教育委員の動きであり、県知事の方針に従わない自治体や学校の動きである。
 上からの指示に黙って従うのが、これまでの学校の姿だったような気がする。それが今回は、自ら判断して決断する動きが目立ってきている。
 これを機会に、いろいろな場面で学校が自ら判断し決断していくようになれば、教育の世界が大きく変わっていくかもしれない。

 

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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