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「全国学力テスト」が教員を評価するツールにされていいのか

【第8回】学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■教員もテスト(評価)をされている現状

 その発言の根拠は、彼が働く県が独自に行っている学力調査の実態だった。
 多くの都道府県が独自の学力調査を行っており、先の土佐町の意見書でも「全国学力テスト」だけでなく都道府県独自の学力調査も「テスト漬け」の一因であると指摘している。

 この県では、独自の学力調査の結果が教員の賞与、昇給、人事異動などに影響する制度が導入されているため、過度な競争を煽る結果となっている。県独自の学力調査も「児童生徒の学力定着度の把握」が目的として謳われているのだが、人事評価に影響するとあっては、校長も含めた教員は必死にならざるをえないだろう。

 全国学力テストは「小学6年生と中学3年生だけ」が対象となっているため、対策は、その学年の担当教員だけでいいことになる。しかし県独自の学力調査では「小学3年生から6年生まで、中学では全学年が対象」となっているのである。これはもはや学校全体が試験対策に追われている状態といえる。
 

■「評価」のために不正を行う教員まで…

 問題はこれだけではない。
 試験中に答えを間違っている子に対して、教員が指をさして正解を教える、といった不正も横行しているという。これは全国学力テストにおいて実際に発覚したこともあった。
 東京都足立区で、テスト中に間違えた答案を書いた児童のところで、教員や校長が間違い部分をトントンと指で指摘して正解を誘導するといった不正が発覚したのは2007年のことだった。その影響かどうかは定かではないが、全国学力テストで足立区は順位を大幅に上げている。

 さらには、得点が低い知的障害を持つ児童や外国人児童の答案は採点しないという不正も明らかになった。
「そういったことは普通に行われているのではないかと思います。私が勤めていた学校でも、県独自の学力調査で知的障害のある子を欠席扱いにしていました」と、先ほどの教員が語ってくれた。

 全国学力テストも都道府県独自の学力調査も、ともに「調査」を謳いながら、実際は競争の手段になってしまっている。そればかりか、それを「評価」につなげることで、教員のストレスと業務量の増加に拍車をかけている。
 表面化していないだけで、そのような状態は水面下で深刻化しているのかもしれない。

 子どもたちも同じで、テストで高得点を要求され、仲間が排除される事態や、不正を良しとする教員の姿を目の当たりにさせられる。それは、子どもたちにとって心地良いものではないはずだ。

 それが、いまの教育現場である。そして、ますますエスカレートしていく気配である。このままで、本当にいいのだろうか? 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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