「借金返済できない」からくりの話をしよう!亀田興毅「令和の多重債務」問題を深掘りする
亀田興毅の“大人の社会科見学”【過払い請求・多重債務編❶】【PR】
◆新たな「借金地獄」を生む銀行カードローン問題
亀田・・・なぜ銀行カードローン問題が起きたのでしょうか?
杉山・・・簡単に言えば、昔、消費者金融がやってたことを今、銀行がやっているんです。今は銀行が企業に貸付るのは金利も安くて儲からない。結局儲かるところに目を付けると、高金利で利息を回収できる「個人」からですよね。あとは手数料ビジネスなどで「深掘り」することを銀行は始めています。最近では、三菱UFJ銀行が来年の9月から「2年間取引がない不稼働口座」から年間1200円の口座管理手数料を取るというニュースが流れましたよね。銀行自体が長引く低金利で利益が出なくなっているからですね。でもその銀行も今、大変ですけどね。どんどん「リストラ(人員削減)」している。
亀田・・・なんでそういう現象に陥るのでしょうか?
杉山・・・この長期の金利低迷のデフレ(「デフレーション」物価が上がらず、金利も上がらず、経営の3要素=ヒト・モノ・カネでは、カネの価値がモノ・ヒトより高くなるので、お金持ちが有利になる)状況では、今まで銀行がやってきたような中小企業などの融資では金利が上がらない。利益が取れないところに輪をかけて今コンプライアンス(法令遵守)がうるさいので仕事が非常にやりづらいんです。正直利益がない。きちんと返してくれる上客だけど、利益は上がらない。かといってちょっと怪しいところに高金利で貸すかっていうと銀行っていうのは危ない融資はしない。そうなると、個人で高金利でお金を貸すっていうのが一番まともに回収できる。利益が取りやすいんですよ。
亀田・・・そう考えると銀行が、語弊があるかもしれませんが、極端に言えば「街金(中小の消費者金融会社の俗語)」みたいな仕事にも手を広げているってことなのでしょうか?
杉山・・・そうとも言えます。
亀田・・・そうすると今まで儲かっていたアコムなどを買収して傘下に置くしかないですよね。お金のことに関しては銀行が一括してやるということになったんですね。なかなかやりますね銀行。そこはやっぱり商売ですね。一般消費者っていうのは一番マーケットがデカいですもんね。世界の一番売れている飲食っていったら結局「マクドナルド」とか「ケンタッキー」ですし、洋服でも一番は「ユニクロ」。一般の大多数の「個人」を押さえにいったからですね。銀行はさすがですね。ファスト・フードならぬファスト・バンク(笑)
杉山・・・アコムやプロミスなど消費者金融が年収の3分の1以上貸せなくなったんですよ。その総量規制ができたんで銀行ローンでいっぱい借りてくださいっていって貸すわけですよね。なんか銀行って綺麗そうじゃないですか。でも借り手は借金が増えてくだけなんです。だから今は、「過払い金を取り戻す」業務よりはむしろ銀行ローンで「自分の抱えた借金で身動きが取れなくなった」方の相談が増えています。特に今だと若い人で返せなくなっている人が増えています。まず皆さんわかってないのが、「入りと出」がちゃんとわかってないんです。例えばまず返し。よく消費者金融であるのが、毎月2万円返しますっていうんですよ。それで2万円返したら枠ができました。それで1万円出てくるんですよ。簡単に言うと2万返して1万借りているんですよ。そういうATMの表示なんですよ。そうすると実際は1万円しか返してない。ただ1万円返しても金利にしか当たらない。元本が一切減ってない。だけど依頼者の方は2万円返した意識なんですよね。実際「借りてるっていう認識」がない。
亀田・・・借りてるっていう認識がない!?
杉山・・・ずっとそのまま借りっぱなしなんですよ。例えば100万借りて年利15%だとすると「年間15万円の利息」になりますよね。そうすると月1万ちょいしか返してないんですよ。それ全部利息で消えるんですよ。
亀田・・・意味分からないですもん。今言われても面倒くさいし、頭痛くなるじゃないですか。普通の人はもっとわからないですよ。
杉山・・・それが1社だけでなく、返済日と金利が違う3社、4社になっていく(多重債務になる)んですよ。そうするとゴチャゴチャして。
亀田・・・覚えるの面倒くさいですもんね。でも、元本は減らない。
杉山・・・かといって日々の生活には困ってないんですよ。ただ何年経っても一向に減らない感覚になる。本当は「自転車操業」に陥っているんだけど、わかっていない。自覚がない方は多いです。
亀田・・・それってすごいですね。貸している側からしたら。金儲けのスキームを考えましたね。素晴らしい。逆にすごいですよ、銀行ローンは。
杉山・・・貸している側からすると金利だけを払ってくれればいい。
亀田・・・貸した分だけ金利で儲かったらあとは元本まるまる利益ですもんね。不動産みたいなもんですもんね。建物があったら家賃収入はずっと利益やみたいな。えぐいな。そうした債務者を助けるんでしょうか?
杉山・・・そうした方は生活スタイルが変わる、例えば結婚する時や、転職するたびに給料が減って払えなくなる時に相談に来るっていうのが多いです。
亀田・・・生活環境が変わった時に。お金も必要になりますもんね。結婚して子供できたりとかして。そうしたとき「1円も元本が減ってない」って。それでどうするのでしょうか?
杉山・・・その方の代理人となって各ローン会社に今どういう状況かっていうのを確認する。まず私たちが代理人になると、貸している方から依頼者に直接連絡ができない。取り立てとか。
亀田・・・先生は、ボクシングで言うと、セコンドですね。そこからどうするのでしょうか?
杉山・・・この方が数カ月でどれくらい返済できるかどうかを見ます。例えば、3社だったら3社に月々どれくらいなら返済できるっていう相談にいって、「3社に4万円であれば確実に返済として入ります」よと。4万円の中で片がつく交渉を各債権者とする。今まで利息18%でやっていたのを0%にしてもらうとか。状況的に支払いどころではなくて自己破産になるかもしれない。債権者は絶対に0%にしたいわけではないけど元本は取り返したい。ならば・・・と。こういう手打ちを「任意整理」の和解(合意)っていうんです。
亀田・・・「任意整理の和解」そういうことか。
杉山・・・そうするとね、利息0%だと毎月1万円でもいつか返済の出口ができますから。それでも結局まとまらない場合、自己破産っていう流れになるんです。でも、破産ってちゃんとした法的な権利ですから貸し手側もわかっています。ただし、過払い請求の問題とは異なり、多重債務者=借り手が「返済計画性がない」という意味において問題があるということになるんです。
亀田・・・なるほど! お金がないから焦ってるから行くわけで。
杉山・・・今はスマホで借りれますからね。「ピッ」とワンクリックで簡単に口座に振り込まれるっていうのもあります。
亀田・・・ゲーム感覚ですね。金利が今18%って言いましたよね。18%は取っていいんですか。それとも取り過ぎなのでしょうか?
杉山・・・そこは100%合法ですね。18%が高いかどうかは政策的な判断なので、ただ仮にアベレージ18%で借りるとしたら、年収の3分の1借りたらキツイと思います。例えば、120万借りてれば、年間で21万強が利息。毎月1万8,000円程度は利息で払わないといけない。だから元本の120万を返済するなら、毎月3万〜4万は返さないと借金は減らないですよね。
亀田・・・毎月4万円を返済しても半分の2万は利息。約60カ月って5年です。「倍返し」だから240万弱、これってむちゃくちゃ大変ですね。
杉山・・・大変ですよ。借りちゃうと。120万の元本を返すのにその倍の200万近くを支払わねばならないわけですから。
◆借金返済も事前準備が必要、何事も早期発見!!
亀田・・・この世の中お金のない人間は本当に「弱い」ですね。「貧富の差」っていうのが歴然と見えてきますね。もうまさに今でも見えてますもんね。今、「中間層」っていうのは本当になくなってきますね。
杉山・・・もう中間層っていうのはないですね。年収1000万円っていないですよね。500万円以下が多いです。年収1000万超えるのは本当に一部ですよね。4.5%(国税庁「平成29年分民間給与実態統計調査」)です。平均年収が441万円(平成30年分同調査)です。
亀田・・・1000万超えるのってこの日本で5%もいないんですか? 月30万円(賞与含む)。それなのに求人では今、人手不足なんですよね?
杉山・・・働く人がいないっていうのは、前々からなんですけど選んじゃうんですね。日本は、セーフティーネットとしての生活保護などの社会保障でどうにかなるんですよ、そういう状況であっても仕事を「選べる」社会なんです。
亀田・・・日本人、「甘ったれ」なんじゃないですか(笑)。ボクシングの世界なら「負けたら終わり」ですから。でも結局は人気商売です。じつは世界チャンピオンになったから稼げるとは限らないんです。4回戦ボーイ(4ラウンド制の試合に出るクラス)でも稼ぐ選手はいます。4回戦でファイトマネー4万円しかない子もおれば、100万円稼ぐ子もいますからね。チケットめっちゃ自分で売る子もおるし、自分で頑張って営業してトランクスにスポンサーめっちゃつける子もおる。練習一生懸命して勝ってファイトマネー4万でいいよって子もおれば、一生懸命練習しながら、寝る時間、帰る時間、ご飯食べる時間を削って知り合いの人に「お願いします」っていってチケットを売りに行く子もいます。結局、やる気、やり方次第です。そういう意味ではお金って何なのか、またその関わり方とは何か、いろいろ勉強になりますよね。
今、杉山先生がやられていることって、カードで借りたりする人たちの「お助けマン的」なポジションじゃないですか。この低金利下で、高金利の支払いをしてでも「お金が必要な」個人が多いということは、マーケットが大きいということですよね。成功報酬も増えるのではないでしょうか?
杉山・・・過払金請求と異なり、債務整理の場合は債権者と交渉する上で「着手金」をいただいております。債務者の多くが自分の現状が分かっていない方が多いです。で最後に「どこも貸してくれない」状態になって初めて「信用のなさ」に気づくんです。
亀田・・・一番困るのはお金がなくなることじゃないですか。借りなきゃならない状況もあると思うんです。その段階で司法書士に相談に来るべきじゃないですか? これって事前準備です。ビジネスでもそうだし、ボクシングも事前にトレーニングしなくちゃダメだし。どういうタイミングで債務者の方には相談に来てほしいと思いますか?
杉山・・・タイミングは「すでに借りてます。でも減らんな」と絶対感じると段階で来ていただければ比較的なんとかなりますね。「今月支払うお金がない」っていう状況では、ちょっと手遅れになるかもしれません。
亀田・・・借金返済もやっぱり早期発見ですね。病気でも一緒ですよ。「俺は死ぬ時は死ぬんや」と言って起きながら死ぬ直前で慌てふためいて「あの時こうしておけばよかった」ってなる。それと同じで自己破産のときになって「あの人に相談しておけばよかった」じゃなくて、早い段階で自分でアンテナを張っていかなくちゃダメですね。今回のこういう記事を見てそういう人たちが気づけたらいいですよね。
杉山・・・借り手も「必要があって借りる」わけだし。貸す側もビジネスです。株主だっているし、従業員も、商売相手もいるわけだから、貸す側だけが悪で「けしからん」と言うのではなく、その貸し借りのバランスが崩れた場合「共倒れ」を防ぐ、興毅さんの言うとおり早めに相談することなんですね。
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