ナイフや刃物について勉強しよう(2)
~ずっと2000円のナイフを使っていた新米猟師女子が、カスタムナイフを使ってみたら―!?~
【第16回】都内の美人営業マンが会社を辞めて茨城の奥地で狩女子になった件
【使い心地最高!!カスタムナイフのすすめ♪】
さてさて、さきほど“自分に合ったナイフ”というワードが出てきましたね♪ 実は自分に合ったナイフを見つける最短の道があります。それが“カスタムナイフ”です。カスタムナイフとは簡単に言うとオーダーメイドの手作りのナイフの事で、メーカーに直接製造依頼を出すことによって、使用者の手の大きさ、体型、使用目的に合わせて、素材からデザインの細部にわたりニーズに応えた世界に一本だけの、自分だけのナイフを作ってもらう事ができるのです!世界に一つだけの自分のナイフ……考えただけでも胸がドキドキします。私も茨城県にある「神原ナイフ工房さん」で作って頂いたので、その時の工程をご紹介していきたいと思います。
(1)ヒアリング
まず最初に、私が“どんな目的でどのように”そのナイフを使いたいのかを工房の方に丁寧に説明します(ヒアリング)。私はもちろん狩猟用にナイフが欲しかったのですが、私の手が小さく非力であったので、今まで使っていたナイフだと私にとって大きすぎて作業しづらく、とても重たかった事が悩みでした。私は特に狩猟の工程の中で「大バラシ」という、獲物の内臓を出し、皮を剥ぎ、それぞれのバラやロース、モモなどのパーツに大まかに分解していく工程をメインで行っています。ナイフが大きいと特に小さな個体のときに本当に大変で、ナイフが思うように動かせず、寒空の下、何時間もかけながらチマチマと作業していました。あまりにも効率が悪すぎて師匠からナイフを借りていたのですが、それでも長すぎて思うようにいきません。そして「大バラシ」はろっ骨を切り離したり、あばら骨を背骨から切り離したり、首を落としたりとなかなかにハードな使い方をします。ナイフの堅牢さや耐久性も大切ですよね。
(2)職人からブレードの形や大きさ、鋼材の提案
私の話を聞いた職人さんから私のニーズに合ったブレードの形や大きさ、鋼材の提案がありました。自分のニーズに合ったナイフって意外と自分ではわからないものですよね。カスタムナイフのブレードの形状は非常に専門的に分かれていますし、鋼材についても素人の私はちんぷんかんぷんです。わからない事があればこの時に積極的に職人さんに質問することをお勧めします! だって納得のいくものが欲しいですもんねっ!
丁寧なヒアリングと職人さんの熟練された経験値のもと、私のナイフは大バラシや皮剥ぎに相性が良く小回りの利く「クラシックハンター」という形状で、大きさは「3.5インチ」、鋼材は硬く、しっかりと長切れする「粉末ステンレス鋼」という鋼材に決まりました!
(3)ハンドル材を決める
次にナイフのハンドル材を決めていきます! 自分がトキメク、イカした色やデザインの物にする事も大切ですが、ハンドル材もニーズによってはしっかりと気を付けていかないといけません。例えば、上で紹介したダイバーズナイフを作りたいときは、塩水による浸食や水圧などにも耐えられなければいけません。
私は軽量で滑りずらく、頑丈なハンドル材である「リネンマイカルタ」という木綿にフェノール樹脂をしみ込ませ、積層に加熱成型した特殊な材料を選びました。色は赤が好きなので「バーガンディリネンマイカルタ」にしました。名前がかっこいいでしょう?(≧◇≦) ちなみに動物の角や牙、時には貝殻などの天然素材なども、ハンドル材として選ぶ方も居るそうですよ。天然素材のハンドルなんて……本当に世界で一つだけのナイフですねぇ。溜息出ちゃいます。(うっとり)
(4)あとは完成を待つのみ!
決めるべきことを決めたら、後はひたすらに職人さんの腕を信じて待つのみです。デザインや素材などにもよりますが、基本は数か月~半年ほど完成まで時間を要するようなので、期待に胸を膨らませながら待ちましょう♪
制作工程を分かりやすく見せていただいたもの。左から右にかけてナイフの工程が進んでいき、ヒアリングをもとに自分が選んだブレードの形や大きさ、鋼材、ハンドル材に基づいて仕上げていただく形になります。
(5)完成!
遂に完成です。私はナイフと一緒に革製のシース(鞘)も一緒に作ってもらいました。皮の匂いがほのかに甘く、デザインも美しいの一言に尽きます。実際に初めてこのナイフを使って獲物を捌いた時の動画がありますので、是非見て頂きたいです。
https://www.youtube.com/watch?v=sN0cEm3gbFc&t=472s
(※動画にはイノシシの解体シーンが含まれますので苦手な方はご注意ください)
猟師2年目。師匠なしでの解体はほぼ初めての状態で、とてもスピーディに解体を進めることができました。私の為に設計されたこのナイフは、まるで今まで私の腕の一部だったように動いてくれます。解体の時、ここだと思ったところを撫でるだけでお肉が切れていく。不思議な感覚です。去年はぜぇぜぇ言いながら切れない切れない騒いでいたのにね(;'∀') 従来使っていた2,000円のナイフは、作業中何度も刃が肉に負けてしまってその都度軽く研いでから使っていました。しかし鋼材にこだわって頂いた私のカスタムナイフは、2頭捌いても切れ味は衰えず作業効率が格段に上がりました。しかしこの素晴らしいナイフを活かすも殺すも私次第。これからは研ぎなどのメンテナンス方法もしっかり勉強し大事に使っていきたいと思います。
【終わりに】
いかがでしたでしょうか? 今回はナイフについて歴史や種類、そして私のカスタムナイフにつ
次回は全国で増加しているイノシシやシカ、クマなどの害獣被害や事故、そしてその対策について、私の住んでいる茨城県の取り組みや全国の取り組みについてお伝えさせて頂こうと思います。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。
監修:神原ナイフ工房さん(茨城県笠間市)