「人間の原点は尿と便なんだ!」ウンコ漏らす父、絶望する母【「認知症の父の介護日記」】
母と子はこうしてだんだん疲弊する⑤
特別養護老人ホーム(以下、「特養」と表記)に入ってからの父の状態と、心揺れる母の言動を、私(=潮)の視点から記しておいた。母も日記をつけ始めた(母の日記は【ネーヤ・記】と表記)。私の視点、ときどき母の視点で綴る「まあちゃん介護雑記」。入所からの1年間を振り返ろうと思う。ちなみに、父と母はいつもの呼称、「まあちゃん」「ネーヤ」で書くことにする。娘の呼称は、「長女・地獄」「次女・潮(私)」で表記する。
特養に入所9か月、ホームには馴染みながらも、久々のお泊まり帰宅するお話。母の「お父さんかわいそう病」はついに克服!? キーワードは凄まじい量とニオイのウンコだった……。
◼️ウンコ漏らす父とオイオイ泣く母
2019年1月1日(火)【ネーヤ・記】
深夜2時。夫が猫と会話しているので目が覚める。ベッドにビニールシートを敷いたので、尿で濡れたのはタオルケットのみ。
深夜3時。モゾモゾと音がするので行ってみると夫は「ウンコ」と言う。
凄まじいニオイ‼
ベッドは汚れていない。が、オムツにもズボンの内側にも便ぐっちょり。
私、ニオイに耐えられず、タオルで鼻と口をふさいで、処理にあたる。
「自分でお尻を拭いて」と言っても、拭いた紙の処理に迷っている様子。
寝ぼけているのか、指にもウンコ! 約1時間の悪戦苦闘。
人間の原点は尿と便なんだとまざまざと見せつけられた。
夫自身がこれらに対処できなくなっている現実を見た。
今後のことを思うと絶望しかない。
午前5時。小便の介助。
午前中、次女(潮)とその夫が来る。昼過ぎに長女(地獄)が来る。楽しい時間はあっという間。夜、次女夫婦は東京へ帰る。
2019年1月2日(水)【ネーヤ・記】
夜1時半・3時・4時半。その都度、オムツと肌着を取り替える。いったいどれほどの量が出るのか。
午前5時前、部屋中に轟音が2回。跳び起きた。猫が押し入れの中に入り、中からふすまを蹴ったようだ。その部屋に寝ている長女、起きるどころか凄まじいいびきをかいて眠り続けている。まったく!
2019年1月3日(木)【ネーヤ・記】
娘たちも帰り、ホームに戻るまであと1日。
深夜1時、やはりびしょ濡れ。立ったまま眠っている。どうしてこんなに漏らすのか。
1回終わるたびに取り替えて、ベッドに寝かせ、布団をかけて寝ようと思ったら、またトイレ、という。それを3回繰り返す。
「なめとんのか、おんどりゃぁ~」
私は自分のベッドでおいおい泣く。夫に聞こえるようにわざとオイオイ泣く。明日は帰る日。今夜は下剤のおかげで便が出たのだから。平穏無事に過ごせるはず。
2019年1月4日(金)【ネーヤ・記】
深夜1時半、小便介助。
午前3時、長い間トイレに座っている。空砲が轟いているので、ガスだまりが噴火している模様。気温が高いので助かっているが、何を聞いても返事ナシ。
この数日、朝はお雑煮。餅でのどを詰まらせなかったのはよかった。夫が不安や怒り、これからのことなど、思いのたけを話してくれた。
「こんな状態では自殺するしかない」とまで言う。
私や娘たちの考えを話すと、
「要するにお前は面倒見たくないのね、ラクしたいんだ!」の繰り返し。
不毛の議論。しかし、近所に特養が完成したら、そちらに移って毎日でも家に帰れるよ、と話をしたら、次第に落ち着いて笑顔も見られるようになった。
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