東武「川越特急」vs西武特急「小江戸号」乗り比べの旅
小江戸 川越をぶらりミニトリップ
小江戸と呼ばれる埼玉県川越市をぶらりと散策したくなった。そういえば、1年ほど前から東武東上線に「川越特急」というクロスシートの電車が登場していたが、なかなか乗る機会がなかったので、これを利用して出かけてみることにした。調べてみると、「川越特急」に乗ると池袋駅から川越駅までは、わずか26分。終点は東上線の小川町駅で1時間ほどの旅になる。時間に余裕があったので、とりあえず「川越特急」は小川町まで乗りとおし、その後、川越まで戻って散策するプランを立てた。そして帰路は本川越から西武の特急レッドアロー小江戸号で都心に戻る予定だ。図らずも、東武と西武の特急乗り比べができる興味深い日帰りコースである。
「川越特急」は、毎日池袋発が10時発と11時発の2本だけという希少価値の電車だ。早くからホームで待っていたのだけれど、回送電車として到着したのは発車の5分前だった。1番線は、前の電車が発車してから20分くらい空いているのだから、早めに入線して特別感を味わわせてくれてもいいのに、これでは何ら普通の電車と変わらないではないか。もっとも、乗車券だけで利用できるお得な電車だから、仕方がないのかもしれない。
到着した電車には「川越特急」という表示が前面と側面窓上にある。ただし、活字風のレタリングではなく、手書き風フォントでの表記と凝っていて、これは味わい深い。東上線には、川越の名所などを車体に描いたラッピング車両が走っていると聞いていたので、これが「川越特急」に充当されるのかな、と思っていたのだが、入線してきた電車はTJライナーに使っている普通の車両だ。これにはがっかりした。並ぶほど待っている人はいなかったので、慌てるでもなくのんびりと席につく。もちろん窓側の席を確保しホッとするものの、周囲を見回すと空席は多く、2人連れ以外は、相席にならずに一人で座っている。
定時に発車。お決まりの停車駅案内のほか、川越の観光案内をするのは「川越特急」と名乗っている以上、当然かもしれない。それも、日本語に続いて英語での放送もある。川越を訪れるインバウンド対策であろう。
板橋区内の住宅密集地を駆け抜け、成増を過ぎると、左から地下鉄有楽町線・副都心線の線路が地上に姿を現し、並走ののち和光市駅で合流する。もっとも、「川越特急」は和光市駅を通過し、最初に停まったのは、その先の朝霞台だった。都心から地下鉄でやってきた人やJR武蔵野線から乗り換えてきた人が乗ってきて、空席はほぼなくなった。とはいえ、相席になるこもない混み方である。
和光市駅から志木駅までの複々線区間が終わり、複線に戻ったのちも、郊外の住宅地を駆け抜ける。新河岸駅を通過し、JR川越線の線路をまたいで、しばし並走すると川越駅に到着。池袋駅からの所要時間26分はあっけない。「川越特急」というので、川越観光の乗客が大勢降りて車内は空くのかと思いきや、降りる人はまばらで、むしろ乗ってくる人の方が多かった。観光特急というよりは地元の利用客ばかりのようである。
川越駅を発車して西武新宿線をまたぐと、続いて川越市駅に到着。ここでも何人か乗ってくる。午後からの授業に出席するために大学へ向かう学生の姿もちらほら。この先沿線には大学キャンパスが目白押しなのだ。
入間川の鉄橋を渡り、広々とした田園風景の中を快走する。特急と名乗るだけあって、川越市駅の次は、坂戸、東松山に停車し、ほかの駅は通過。このあたりでは各駅に停車する準急や急行とは差別化を図っている。快速は特急と停車駅が同じで、東上線では快速が急行よりも上位にあるところがJRなどの他社とは逆で興味深い。
どこまでも住宅地が続き、せっかくクロスシートに乗ったのに旅気分が味わえないなあとがっかりしていたのだが、森林公園駅を過ぎ、武蔵嵐山(むさしらんざん)駅を発車したあたりから、ようやく車窓に森や丘陵風景が飛び込んできて旅気分で盛り上がってきた。
駅間の長い武蔵嵐山駅と小川町駅の間には、嵐山信号場があり、池袋駅から続いてきた複線区間はここで終わり、その先は単線になる。すっかりローカル色が強まり、冬枯れの丘陵地帯を進むと、やはり単線で架線が張られていない非電化のJR八高線と合流。「川越特急」の終点小川町駅に到着する。池袋駅から1時間1分。ほどよい乗車時間だった。
「川越特急」の車両は、折り返し、森林公園行きの普通電車になる。これもクロスシートなので、わずか13分とはいえ優雅な乗車が楽しめる。森林公園駅で途中下車して一息ついていたら、何と噂のラッピング車両が池袋方面から到着した。思わず写真を撮っているうちにあっけなく車両基地へ引き上げていく。一瞬とはいえ遭遇できて幸運だった。
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