トライアウト、合流!! 沈黙のバス
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記<4>
飛行機に乗ったとたん、不安が込み上げてきた <全4ページ>
自己紹介でわかったこと
スケジュールや今日の予定を聞き、最後に自己紹介をする、という流れになり、そのころには僕の緊張感も少し和らいでいた。なんだか緊張したり、ちょっと薄まったりと、いま思い出せば感情が乱高下した一日だったと思う。
一人ずつ自己紹介が始まり、そこで会議室にいた選手たちがトライアウトを手伝ってくれる四国アイランドリーグの現役選手であることを知った。
「あ、現役の選手たちなのか」
そんなふうに思っているところに、僕の順番が来る。
「228番」
僕の割り当てられた番号だった。初めて後ろを振り返り、大きな声で言った。
「どうも! お笑い芸人をやっているサブロクモンキーズの杉浦双亮です!」
シーンとしていた。
正直、僕自身この自己紹介の場でどういう話し方をすればいいのか迷っていた。
野球を真剣にやりに来ている。その一方で、芸人として見られてもいる……。少しは場の雰囲気が和むような話にした方がいいのだろうか……。これは一種の職業病なのかもしれない。人前に出れば、ついそう思ってしまうのだ。
でも、第一声の反応で分かった。
やっぱりここは真剣勝負の場だ。
「歳は39です、みなさんより10以上、下手をすると20近く違うかもしれませんが、真剣にやらせていただけますので、よろしくお願いします」
偽らざる気持ちだった。この瞬間に気持ちがより引き締まったと思う。
ただ一方で、あまり歓迎されていないのではないか、という空気も感じ取った。やるぞ、という気持ちと、ちょっとした不安。そんな感じだった。
その後、体力テストのために球場へと移動した。トライアウトを受ける選手はバスに、手伝ってくれる現役選手は各自で移動をする。ここで、今回トライアウトを受ける選手が10人だということを知った。
再び沈黙のバス――羽田空港を出てからここまで、僕はスタッフの方への挨拶と「トイレ行ってきていいですか?」という言葉以外、だれとも会話をしていなかった。ふだん、こんなに長い時間、人と話さないことはあまりないのでなんだか変な感じだった。
ずいぶん長くなってしまったので、今回はここまで。いつになったら実際のトライアウトの話になるのか……せめてシーズンが始まるまでにはトライアウトの話を終えたい(笑)。