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SNSを賢く使い、「自分ブランディング」のツールにする!【角田陽一郎×加藤昌治】

『仕事人生あんちょこ辞典——50歳の誤算で見えた「ブレイクスルーの裏技45]』

 

■「興味があること」×「個人的なこと」がブランドになる

 

加藤:「何を書くか」what to write が大事なんだけど、それがアーカイブとして読まれるために「こういうことを意識してやると、いいことがある」みたいなアドバイスがほしいかな。

 

角田:そこは「A×B」で考えるんだ。

僕は「結局は新しいものしかヒットしない」と思ってるんだけど、ところが人類の一番の問題点は「もう99.9パーセントは世に出ちゃったから、新しいものなんてない」ってことでしょう?

 凡人である我々が「新しいもの」を見つけられなくて困ったとしても、「新しい組み合わせ」ならできるんだよ。じゃあ「新しい組み合わせ」をつくろうという時に、それを「A×B」って定義するんです。

「A×B」の「A」っていうのは、この世に存在する何でもいい。むしろ「あなたが興味あること」でいい。

 広島東洋カープに興味があったら「広島東洋カープのこと」を書けばいい。でもそれだと「新しさ」がないから、「×B」が必要になる。

 この「B」は、「僕(Boku)のB」だって言ってるの。「『A』というものを、僕(B)が見たらどう思うか」を文章に書きましょうっていうことなんです。

 その時に、例として、僕は『最速で身につく世界史』の話をするんだけど、あの本の場合「A」が世界史で、「B」がバラエティプロデューサーである角田なわけですよ。

 僕なんかより世界史の本を書ける人はたくさんいるし、バラエティ番組のプロデューサーという意味で僕なんかより優秀なプロデューサーもたくさんいるけど、「バラエティプロデューサーが書いた世界史の本」は僕しか書けない。だからきっとそこそこ売れたんじゃないか、って話をしてるわけです。

「Aだけ書く」というのは学者的な文章だよね。「Bだけ書く」というのはごく個人的なことだ。でも、それをかけ算したところに新しさが生まれる。

 「プラスチックコーディネーター」というBだけだと全然興味を持ってもらえないけれど、「プラスチックコーディネーターが『嵐』をプラスチックに喩えた」みたいな内容を書けば、少なくとも嵐のファンはその文章を読んでくれるかもしれない。

 さらに、文章が面白くてどんどんフォロワーが増えると、僕のBが「ブランド(Brand)」のBに変わるんだね。

 

加藤:ある程度自分の中に、「まあまあこれがBだな」ってのがあれば始められる感じがするけど、「わたしのBって何なんだろう?」って迷ってる人も多いと思うんです。その時には「Bは徐々に、だんだんできていくから、まずはアーカイブから始めていこうよ」ということなのかしら。

 

角田:「自分にBなんてない」って言ってる人も、意外にあるもんだよ。「40代の主婦」でもいい。「子持ちで40歳で共働きの私がSMAPの解散に思ったこと」でも別にいいわけですよ。

 ただし、40代主婦で子持ちの人って何百万人といるじゃん。子持ちの主婦ってだけなら3000万人ぐらいいる。

 だったらそこに「広島東洋カープファン」って付けると、ぐぐっと40万人に下がる。つまり、ちょっとだけ「個人的なもの」になる。

 さらにそこに「元風俗嬢」っていうところまで入れたら全国で40人になるかもしれないけど、「それはあなたのブランドとして間違ってますか、間違ってませんか」ってことは、自分で考えるしかないんじゃないでしょうか。

 それに、「自分の定義」が実はあるんだけど、外では内緒にしてる人は多いじゃん。「俺、本当はこういう人間なんだけど、会社で見せるのは恥ずかしい」みたいなさ。

 

加藤:はい。あるね。

 

角田:という気持ちは分かるから、あえてまずそれをやってみましょう、本当に恥ずかしいならサードネームでもいいからやってみよう。単純に、それができない人のほうが多いから、大事になる気がするんだよ。定義は後々変わっていい。間違ってたら直せばいいわけだから。

 

(構成:甲斐荘秀生)

 

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角田 陽一郎/加藤 昌治

かくた よういちろう かとう まさはる

角田 陽一郎(かくた・よういちろう)

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者 

千葉県出身。千葉県立千葉髙等学校、東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社を設立(取締役 ~2013年)。2016年TBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出、「ACC CMフェスティバル」インタラクティブ部門審査員(2014、15年)、SBP高校生交流フェア審査員(2017年~)、その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院にて文化資源学を研究中。著書に『読書をプロデュース』『最速で身につく世界史』『最速で身につく日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』『人生が変わるすごい地理』『運の技術』『出世のススメ』、小説『AP』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。好きな音楽は、ムーンライダーズ、岡村靖幸、ガガガSP。好きな作家は、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、司馬遼太郎。好きな画家は、サルバドール・ダリ。

                                                             

加藤 昌治(かとう・まさはる)

作家/広告会社勤務

大阪府出身。千葉県立千葉髙等学校卒。1994年大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(CCCメディアハウス、2003年)、『発想法の使い方』(日経文庫、2015年)、『チームで考える「アイデア会議」考具応用編』(CCCメディアハウス、2017年)、『アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編』(CCCメディアハウス、2017年)、ナビゲーターを務めた『アイデア・バイブル』(ダイヤモンド社、2012年)がある。           

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