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酒と事件とNHK、明暗分けた草彅剛と山口達也

酒による悲劇や喜劇

 そんな番組と対照的だったのが、昨年12月27日に放送された「あさイチ」(NHK総合)だ。ゲストは草彅剛。そう、09年に泥酔して公園で全裸になって騒ぎ、公然ワイセツ容疑で逮捕された人だ。

 警察官の「服を着ろ」に対し「ハダカだったら何が悪い」と反発したりしたというが、本人はそのときの記憶がなく、反省を示したことから、起訴猶予となった。ただ、1ヶ月の謹慎を余儀なくされ、数年にわたって断酒を敢行。しかも、その余波は今なお消えていない。SMAP解散後、新しい地図として行動をともにする稲垣吾郎と香取慎吾がサントリーのCMに起用された際、商品がノンアルコール飲料だったにもかかわらず、彼の姿はそこになかった。

 そんな草彅が「あさイチ」で「酒」をネタにしたのだ。VTRで登場した仲のいいユースケ・サンタマリアが「今度、俺がボトルキープしてる店があるから、そこでゆっくり飲もう」と発言。じつはこれ、ボケだったようで「だいたい、ユースケさん、お酒飲まないですからね」と、ツッコミを入れていた。

 さらに、事件後、高倉健から手紙をもらって、その主演映画に出演した話を披露。緊張のあまり頭が真っ白になり、そのおかげで素の芝居が自然にできたことへの喜びを語ったうえで「お芝居もハダカになって」と、事件をだぶらせる冗談まで口にした。

 その途端、ちょっとあわてて、

「まぁ、僕『ハダカになって』って。生放送でした。あー、やばいやばい」(笑)

 と、自分で混ぜっ返していたものの、かなりふっきれているのだなということが伝わってきたものだ。

 実際、みそぎは済んでいるわけだし、解散のゴタゴタがあったおかげで、事件が「ひとつ前の騒動」になったというのも作用しているのだろう。

 そして何より、こちらは自己完結的な事件だったことが大きい。騒いでいるのを通報した住民はちょっと怖かっただろうが、ハダカになる際に服をきちんと畳んでいたことなど、今では微笑ましい話として語られているほどだ。ある意味、喜劇的なのである。

 その点、山口の事件は悲劇的というか、未成年へのセクハラやパワハラという要素も含んでいて、最近の風潮ではより厳しい目を向けられがちだ。

 昨年夏には女性誌で、被害者への謝罪の念と「テレビでは私の名前すら出せない」ことについての4人への申し訳なさを語っていた。個人的には、あの事件は引退するほどのものではなく、復帰をしても構わないと思うが、本人いわく「最後の取材、最後の告白」ということだった。

 なんにせよ「食の起源」がナレーションで言っていたように、酒が「危ういもの」であることは否めない。芸能人に限らず、人類は酒による悲劇や喜劇をこれからも繰り返していくのだろう。

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『痩せ姫 生きづらさの果てに』
エフ=宝泉薫  (著)

 

女性が「細さ」にこだわる本当の理由とは?

人類の進化のスピードより、ずっと速く進んでしまう時代に命がけで追いすがる「未来のイヴ」たちの記憶
————中野信子(脳科学者・医学博士)推薦

瘦せることがすべて、そんな生き方もあっていい。居場所なき少数派のためのサンクチュアリがここにある。
健康至上主義的現代の奇書にして、食と性が大混乱をきたした新たな時代のバイブル。

摂食障害。この病気はときに「緩慢なる自殺」だともいわれます。それはたしかに、ひとつの傾向を言い当てているでしょう。食事を制限したり、排出したりして、どんどん瘦せていく、あるいは、瘦せすぎで居続けようとする場合はもとより、たとえ瘦せていなくても、嘔吐や下剤への依存がひどい場合などは、自ら死に近づこうとしているように見えてもおかしくはありません。しかし、こんな見方もできます。

瘦せ姫は「死なない」ために、病んでいるのではないかと。今すぐにでも死んでしまいたいほど、つらい状況のなかで、なんとか生き延びるために「瘦せること」を選んでいる、というところもあると思うのです。
(「まえがき」より)

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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瘦せ姫 生きづらさの果てに
  • エフ=宝泉薫
  • 2016.09.10