狩猟といえば銃だけど、でも銃って一体どんなもの?
【第18回】都内の美人営業マンが会社を辞めて茨城の奥地で狩女子になった件
【猟銃を扱うという事。事故例から考える】
さて、皆さん。私はこういった記事を書かせて頂いている上で、銃の素晴らしさや便利さをお伝えしていく中で必ず一緒にお伝えしなければならないと思っていることがあります。それは“猟銃による事故”についてです。序盤でお伝えさせて頂いたように、銃というものは本来遠く離れた動物や人を殺傷する為の道具として開発・発展してきました。つまり、銃を扱うという事は獲物の命だけでなく、人の命を奪ってしまう可能性が大いにありうるという事です。
環境省のホームページに平成25年から27年までの「狩猟により発生した事故件数」というデータが上がっています。そのデータによると、平成25年度の全国での狩猟事故発生件数は87件(うち8名死亡)、平成26年度は73件(うち5名死亡)、平成27年度は74件(うち7名死亡)との事でした。あってはならない話ですが、それでも毎年一定の割合で事故が起こり、それによって亡くなってしまう方がいるのです……。当たり前の話ですがこの数字の中に、故意に事故を起こしたいと思って事故を起こした人はいません。いったいどのような状況で事故を起こしてしまうのでしょうか。まだ銃を持っていない貴方には想像もつかないはずです。
2012年/山梨県大月市 登山中の女性の太ももにイノシシ猟をしていた男が撃った弾が当たり大けが。
2014年/福岡県みやこ町 山林にぎんなん採りに来ていた男性が、イノシシ猟をしていた男の猟銃で胸を打たれて死亡。
2016年/兵庫県佐用町 イノシシと間違え猟銃発砲。狩猟仲間の男性死亡。
2017年/岩手県花巻市 有害鳥獣駆除中に猟銃が暴発し男性が死亡。
2018年/北海道恵庭市 猟師が森林管理局の職員をエゾシカと間違え誤射。撃たれた職員死亡。業務作業中の職員はオレンジ色のヘルメットと赤い上着を着用していた。
2018年/千葉県鴨川市 サルの駆除をしていた同市の男性が散弾銃を発射したところ、近くに住む男性の頭部にあたり死亡。
2019年/岐阜県下呂市 空き地で有害駆除を終えた男性が散弾銃から弾を抜いたところ銃が暴発、近くにいた別の男性に当たり死亡。
とても痛ましい事故ですね……。上に挙げた事故例ですが、ほんの一部にすぎず、けが人はもちろんの事、死亡事故は毎年と言ってもいいほどに起こっています。亡くなられてしまった方の無念、ご遺族の悲しみ、怒りはきっと計り知れない事でしょう……。このような事故を取り上げさせて頂くにあたって、事故に遭われてしまった方に深く哀悼の意を表すと共に、いち狩猟に携わる者として、このような悲しい事故の再発防止に全力で努めていきたいと思います。
事故原因を調べてみたところ、狩猟中の「自損事故」のほとんどが【暴発】でした。暴発事故は1年目の新米ハンターが最も合いやすい死亡事故だそうです。銃の取扱いに慣れていないという事ですね。皆さんどうか気を付けてくださいね……。ちなみに、猟銃とは関係ありませんが、狩猟中の死亡事故例として、獲物(イノシシ、クマ、シカ)からの逆襲による死亡事故や、マダニ感染症での死亡事故、滑落死、転倒による死亡事故などもありました。
一方、本当にあってはならない「他損事故」の原因ですが、そのほとんどが「獲物と見間違えた」「獲物だと思った」という【思い込み誤射】が原因です。暴発や流れ弾、跳弾などもありましたが、ほとんどの事故がしっかりと獲物を確認してから引き金を引いていれば防げたであろう事故です。銃の威力は凄まじいです。獲物を打ったつもりが貫通、その先にいた人に当たり死亡という事故もありました。
私は、ハンターが増えてほしいと願う一方で、狩猟を気軽に始めてもらいたいとは全く考えていません。
興味を持ってくれた方には是非、猟銃を持つという事とは、狩猟をするという事とはどういう事なのかを真剣に考えてもらいたいと思っています。
山でイノシシと対峙している時、いつ何かの拍子でイノシシがこちらへ突っ込んでくるかもしれないといつも思っています。この間は山で100キロ級の子連れイノシシと至近距離で(10メートルくらい)遭遇しました。向こうが運よく反対方向の山の方へ逃げてくれたので事なきを得ましたが、こちらに向かってきていたら私は今この記事を書けていないでしょう。私を含めて、ハンターを志した者ならば誤射や暴発事故、獲物の逆襲によるケガや死亡事故の覚悟はある程度はできているのだと思います。もちろん絶対に避けたいですが! だけど、例えば登山している方や、山菜を取りに来ている方、一般の方は違います。いくら駆除活動とはいえ、新米だったからとはいえ、見間違えたからとはいえ、撃ってしまえば私たちは“犯罪者”になってしまうのです……。銃を持つという事は、そういう事なのです。
【光と闇。終わりに】
いかがでしたでしょうか。今回は“猟銃”
すべての事象には“光”と“闇”の部分があります。
「自分ならば大丈夫だろう」
「経験上これなら大丈夫だろう」
……そういった油断や思い込みが、あなたやあなたのご家族、そして何も関係のない人たちを“闇”に飲み込んでしまうのです。
この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。