【注目の岩田健太郎教授が語る】感染症といえばワクチン!それ ホントに効いてるの?~ワクチンの効力~
インフルエンザ なぜ毎年流行するのか⑤
厚労省は新型コロナウイルスのワクチン開発を進めているものの、毎年流行する感染症といえばインフルエンザ。事前にワクチンを打つことで予防対策をする人も多いと思うが、果たして「本当に効果があるのだろうか?」
感染症診療の第一人者であり、神戸大学大学院医学研究科感染治療学分野教授・岩田健太郎氏の著書『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』(KKベストセラーズ)から、ワクチンの効力についてお話しする。インフルエンザ・ワクチンの効力やいかに。
◆インフルエンザ・ワクチンは効きます。 でもビミョー⁉️
ところで、インフルエンザと言えばワクチンですね。毎年秋口になると接種する人も多いと思います。
しかし、あのインフルエンザ・ワクチン。本当に効いているのでしょうか。年によって「効いている」年と「効かない」年があるような気がしませんか? それに、ワクチンを打っていてもインフルエンザになったって人もいるし、逆にワクチンを打っていなくてもインフルエンザになんてなったことないよーなんて人もいます。どうも、どこまで当てになるのか分かりませんねー。
結論を先に申し上げると、インフルエンザ・ワクチンは「効いています」。毎年、確実に効いています。ただし、「効く」とはどういうことか? ソモソモ論で理解する必要があります。なにー? ややこしい?
ワクチンが「効いている」というのは、そのワクチンを打ったらインフルエンザにならない! という意味ではありません。えーっ! じゃ、意味ないじゃ〜ん。
と思ってはいけません。ワクチンが「効く」というのは、
ワクチンを打った場合と、
ワクチンを打たなかった場合
この2つで、インフルエンザになる確率が違い、ワクチンを打ったほうがインフルエンザになりにくい、ということなんです。分かりにくいですかー?
アメリカの疾病対策予防センター(CDC)というところがまとめていますが、例えば2017–18年の冬のアメリカのインフルエンザ・ワクチンの効果は36%でした(Seasonal Influenza Vaccine Effectiveness, 2005-2018 | Seasonal Influenza (Flu) | CDC [Internet]. 2018 [cited2018 Aug 20]. Available from:https://www.cdc.gov/flu/professionals/vaccination/effectivenessstudies.htm)。
これは、ワクチンを打たなかった人のインフルエンザのなりやすさと、打った人のなりやすさを比べると、打った人のほうが36%インフルエンザになりにくくなりましたよっという意味です。
なんか、36%って微妙な数字じゃね? そういうご意見の読者もおいでかもしれません。ぼくも同感です。インフルエンザ・ワクチンの効きって実は「ビミョー」なんです。
ただ、インフルエンザは非常に流行性が強い感染症なので、とてもたくさんの、何千万という単位の患者さんが発生します。仮に3割患者さんが減ったとしたら、ウン百万という単位の減少です。苦しむ患者さんは減りますし、冬に重症患者でごったがえす医療機関の負担軽減にもなります。医療機関の負担が減ると、重症患者受け入れ拒否とか、医療事故とかも減るメリットがあります。結局は患者さん自身のメリットにもなるんです。情けは人の為ならずー。
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KEYWORDS:
『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』
著者/ 岩田健太郎
本屋さんの「健康本」コーナーに行くと、たくさんの健康になる本とか、病気にならない本とか、長生きする本とか、若返る本とか、痩せる本とかが売っています。ところが、そのほとんどがインチキだったり、ミスリーディングだったり、センセーショナルなだけだったり。要するに「ちゃんとした」本がとても少ないのです。そういうわけで、感染症や健康について、妥当性の高い情報を提供しようと、本書をしたためました。