コンビニから見た「働き方改革」見直されるべきフランチャイズ契約の問題とは
コンビニを見るときっと気づく、日本の経済と働く皆さんが元気になる兆しがある
■時給アップで人件費が膨らみ、オーナーは過重労働に追い込まれてしまう
コンビニ1店舗あたりの日販が停滞して利益が減っている。その理由として「人口の減少と店舗数の増加(1店舗あたりの客数の減少)」ということはありますが、実はこれ以外にも理由があります。それは、時給アップによる人件費の増加です。
そもそもフランチャイズ店の利益は、粗利益を本部と配分したあと、大きくは人件費と光熱費と廃棄を差し引いた残額で決まります(契約により、一部の経費を本部が負担することもあります)。近年は「人手不足でアルバイトの確保が困難」「政府の方針で最低賃金の値上げ」という2つの理由により、コンビニの時給が上がり続けています。経済産業省によれば、小売店舗のアルバイト時給は2014年1月の約930円から2018年9月には1040円を超えたそうです(経済産業省/ 新たなコンビニのあり方検討会)。
110円の増加がどれほどの影響を及ぼすのか、計算してみましょう。 1日2人体制でアルバイトを常時雇うとすると、
・5時から 時まで3740円( 時間で増加分110円×2名)
・25%増しの深夜手当時間帯1925円(7時間で増加分137・5円×2名)
計5665円の人件費アップとなり、1年に換算すると206万7725円。すなわち、この分だけオーナー収益が減ってしまうのです。
結果、オーナーが収益を維持するためには、過重労働を余儀なくされるようになります。しかし、オーナーの収益が人件費に圧迫されて減る一方で、本部はというと最高収益を毎年更新し続けていました。
こうした状況が続けば、当然ながらオーナーたちの心情に変化が訪れます。経済産業省が実施した「コンビニ調査2018」によると、「契約更新を希望するか」 との質問に対し、2014年は「更新したい」が68%、「分からない」が10%でした。
ところが、2018年には「更新したい」が45%に減り、「分からない」が 37%に大きく上昇したのです。
そして、オーナーたちの不満が噴出した2019年、時短営業を強行する店舗が登場。メディアにも取り上げられ、問題が顕在化したわけです。
■ついに本部が動いた!!
世論の後押しも大きかったのでしょう。これまで、決して動かないと思われていた本部が、ついに重い腰を上げました。大手3社の時短営業に対する取り組みは次の通りです。
【セブン-イレブン】2019年10月21日に「深夜休業ガイドライン」を制定。約230店舗で時短営業を実験中。11月からは8店舗が時短営業(深夜休業)を開始。
【ファミリーマート】同10月21日時点で全国632店舗で時短営業を実験中。11月14日には24時間営業を前提とした今の契約の抜本的な見直しを発表。加盟店のオーナーが希望すれば時短営業を認める新たな契約を2020年3月から導入。深夜の時間帯を毎日休業もしくは日曜の深夜のみ休業のどちらかが選択可能。
【ローソン】同11月1日時点で118店舗がすでに時短営業中。2020年元日に約100店舗で休業実験を行う予定。
今回の時短営業問題をきっかけに、これについて本部とオーナーが話し合う機会が増えました。これは、コンビニ業界においては革命的な出来事と言っても過言ではないのです。
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【渡辺広明氏 出演情報】
2/1(土曜)発売 雑誌『広報会議』書評ページにインタビュー掲載
2/8(土曜)テレビ朝日『サタデーステーション』20:54〜
2/12(水曜)BS日テレ『深層NEWS』22:00〜
2/15(土曜)発売 雑誌『DIME』
2/20(木曜) フジテレビ『Live News α』 23:40~
2/21(金曜) 静岡朝日テレビ『とびっきり!しずおか』16:45〜17:53
『コンビニが日本から消えたなら』
渡辺広明 (著)
少子高齢化デフレ、AIデフレという新地獄に負けない経済戦略が実はコンビニで行なわれている! 日本一のコンビニ流通アナリスト渡辺広明氏が誰にとっても身近であるコンビニの最新施策を分析し、小売業の未来図を説く。今話題のコンビニ問題と社会問題に関する解決策を提案。ここまで真相に迫りって述べた作品は今までない!すべての業界で働くビジネスマンにも通じる「いい仕事」をするために何を考え何をすべきかを説くビジネスの教科書となる1冊です。
全国一律、「24時間開いててよかった」をキャッチフレーズとし年中無休の利便性を打ち出していたコンビニが、キャッチフレーズを「近くて便利」に変更し、上質な品揃えと接客で「お客様から常に頼りにされる店」へと変化しています。それがめまぐるしく変化を遂げるコンビニのレイアウトや新商品展開、AI IoTの導入、セルフレジの導入、健康・医療サービス、高齢者へのサービス、エコな商品の開発などに見て取れます。
1.こういった日本社会が抱える課題点とコンビニの変化には密接なつながりがあり、その問題を解決する施策こそ、従事する「人」が描くべき経済戦略であり、5万8699店舗という小売業界世界No, 1を誇るコンビニが取り組む施策だからこそ、必ずや世の中の常識となっていきます。この経済戦略、働き方の新方程式への気づきを読者が得られます。
2.著者渡辺さんが、今までTVでは表現し切れていない、とっておきのリアルなコンビニ店長時代の体験エピソードを放出して頂きます。これは読み手にとって青春時代のコンビニを思い出す原風景であり、コンビニはそこまでするのか…と驚きの内容となっています。いい仕事を目指す人にとって、感動し涙すること間違いなしです。
この2点が本書の最大のおすすめポイントです。