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年金政策ミスによる長期株価低迷に備えよ!

元野村投信ファンドマネージャーの警鐘・金融資産が消滅する! 第3回

「年金だけでは、老後の生活資金が2,000万円不足する!」「老後に備え、若い頃からの資産形成による”自助”を勧める」ーー。昨年発表された金融庁の報告書に、国民の多くが不安を抱いた。「今のうちに投資を」と考えている読者に、「GPIFの年金政策ミスによって、長期にわたる株価低迷が始まります。アベノミクスを支えた年金運用の後遺症。その時期は、早ければ東京五輪後です」と語るのは、現況に危機感を抱き、警鐘を鳴らす元野村投信ファンドマネージャー・近藤駿介氏だ。「202X 金融資産消滅」の真実と「今すべきこと」を語ります。(『202X 金融資産消滅』(KKベストセラーズ)より引用)

◼️国家予算を上回る資金を運用するGPIFが
「公的年金2000万円不足問題」を左右する!

 「公的年金2000万円不足問題」によって公的年金に対する不安が高まったことで、若い人たちを中心に「公助から自助へ」という考え方が芽生え、投資に対する関心も高まってきているようです。

 こうした動き自体は長年「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げてきた政府にとって喜ばしい動きかもしれません。しかし、それは日本の年金制度は「100年安心」と繰り返してきた政府の言葉を信じる者がほとんどいなくなったことの裏返しでもあることを考えると、政府にとっては危機的な状況になってきているともいえます。 

 公的年金に対する不信感が拭えない一つの要因は、制度やお金の流れが複雑でよく分からないことです。最近は「公的年金2000万円不足問題」が燻り続けるなかで、年金の健康診断だと称される5年に一度の「財政検証」が行われたこともあり、将来の給付額な どについては多くのメディアが専門家を呼んで解説を加える場面も散見されるようになりました。

 しかし、公的年金の運用に関してたびたびメディアを賑わせているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、公的年金制度の中でどのような立ち位置にいるのか、GPIFがどのような運用をしていて、それが金融市場にどのような影響を与えているのか、そして今後どのような影響を及ぼしていく可能性があるのかという、運用上の問題や課題についてはほとんど紹介されることはありません。

 

◼️私たちの年金給付の明暗を左右するGPIFの運用

 今回の連載記事では「100年安心」といわれる日本の年金制度の中で、GPIFの立ち位置や、その運用収益がどのように将来の年金給付に関係してくるのか、さらにはGPIFの現状がどうなっていて、今後金融市場にどのような影響をもたらすのかを中心に考えてみたいと思います。

 GPIFは公務員の共済年金を除いたサラリーマンや個人事業主などの公的年金を管理運用する機関です。

 GPIFが管理運用する資産額は2019年6月末時点で161・7兆円と、2019年度の国家予算102・6兆円を上回る大規模なもので、安倍総理はたびたび「世界最大の機関投資家」と豪語しているほどの巨大な運用資産を持つ機関です。

 GPIFが管理運用する資金規模がどうして国家予算を上回るような規模に膨れ上がったのかというと、年金には保険料の徴収と年金支給の間に時間的ラグがあるからです。

 GPIFの前身は1961年に設立された年金福祉事業団で、特殊法人改革などを経て2006年にGPIFという独立行政法人となり年金資金の管理運用を引き継いでいます。

 日本の年金制度は「賦課方式」と呼ばれ、現役世代が支払う年金保険料と税金によって年金世代への支払いを行う方式を採用しています。この「賦課方式」は、現役世代の数が多く、徴収する年金保険料総額が年金世代に支払う給付金総額を上回っている時にはこの差額が年金運用資産として積み立てられていきます。

 

◼️世界最大の機関投資家GPIF

 GPIFの前身である年金福祉事業団が誕生した1961年といえば日本が高度成長に向かい始めた時代で、戦後の1947年から1949年に生まれた「団塊の世代」が経済成長の牽引役を果たしていた時代でした。最も人口の多い「団塊の世代」が経済成長を牽引していたこの時代は、年金保険料を納める現役世代の人数が、年金を受け取る年金世代よりも格段に多かった時代でもありました。国が発表している資料でも年金福祉事業団が設立された直後の1965年は、 20~64歳の現役世代の人口は年金世代である65歳以上の人口の9・1倍だったと記されています。

 現役世代が年金受給世代の9・1倍もいましたから、現役世代から徴収した年金保険料から年金給付をしても、当然の如く多額の資金が残ることになりました。こうして残された資金が年金積立金としてプールされていったのです。この年金積立金は、グリーンピアという年金保養施設などへの杜撰な投融資などで2000億円近くが消滅するなどの紆余曲折を経て2006年にGPIFに引き継がれていったのです。

 現在GPIFが、安倍総理が「世界最大の機関投資家」と自画自賛するほどの多額の運用資産を管理運用しているのは、これまで年金世代が少なく現役世代から徴収してきた年金保険料が貯まってきたからにほかなりません。

KEYWORDS:

『202X 金融資産消滅』
著者/近藤駿介

アベノミクスを支えた世界最大の機関投資家GPIFの日本株離れが始まる。
個人の金融資産のメルトダウンをどう乗り切るか!? 

元野村投信のプロ・ファンドマネージャー、現・金融経済評論家、コラムニストの著者がアベノミクス後にやってくる日本経済の危機に警鐘を鳴らす。アベノミクスを日銀とともに支えた世界最大の機関投資家GPIFが、安倍政権退陣後に日本株の売り手に転じることから株価が暴落し、日本人の金融資産や年金が大幅に目減りする。早ければ2020年代前半に始まる日本経済の長期低迷への備えを提案する。著者は東洋経済、ダイヤモンド、ブロゴスへの寄稿や、MXテレビ「WORLD MARKETZ」のレギュラーコメンテーターを務めるなど、さまざまな経済メディアで活躍中です。

【内容】
第1章 作り出されたアベノミクス相場 
第2章 世界最大の機関投資家GPIFとは何だ
第3章 GPIFの運用の問題点 
第4章 早ければ2020年からGPIFは売手に回る? 
第5章 投資の常識は非常識
第6章 「世界最大の売手」が出現する中での資産形成

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202X 金融資産消滅
  • 近藤駿介
  • 2020.02.27