「靴下の痕」は心不全の恐れ。危険な4つの症状と疑われる疾患
心臓・血管の病気の専門医が明かす病の真実-⑤
■「痛い場所がわからない」胸痛は心筋梗塞の前触れ?
知っておいて頂きたい危険な症状の最後は、胸の痛みです。
お伝えしたように、胸の違和感や痛みの多くは心臓とは無関係なのですが、ごく一部の痛みは心筋梗塞の前触れである恐れがあります。
特徴は、痛みの部位を特定できないことです。医師の間では「ここが痛い」とはっきり指し示すことができる痛みの多くは問題ないことが知られていますが、ある程度広い範囲が圧迫されるような、鈍い痛みには要注意です。患者さんによっては胃や肩が痛むと訴える方もいますし、歯に痛みが走ると言う方もいます。
心筋梗塞の前触れである痛みは、
・数分から10分程度続く
・痛みに波があり、しばらくすると良くなることも多い
ことも特徴です。
痛みは心臓の太い血管(冠動脈)が血栓によってふさがりかけているときに発生するのですが、詰まりかかった血管が再び流れはじめることも少なくありません。そんなときは痛みが消える、または改善するのです。
また、痛みを感じはじめたころは、運動時や飲酒時など心拍数が上がる場面だけで痛みを感じることが多いようです。しかし、徐々に痛みを感じる時間が増えていきます。
一時的に改善しても、いずれ完全にふさがるときがきます。それこそが心筋梗塞であり、命に係わります。このように、冠動脈が詰まったり細くなったりして心臓の筋肉に十分な酸素や栄養が行き届かなくなる病気を冠動脈疾患と総称しますが、治療は可能なので、直ちに循環器内科に行ってください。
心筋梗塞の難しい点は、必ずしも脈拍や血圧に前兆が現れるとは限らないところです。心臓の血管がふさがっていないときは健康な人と変わりありませんから、脈拍も血圧も正常です。
ですが、心筋梗塞は発生する時間帯に偏りがあります。朝と夕方に多いのです。朝に心筋梗塞が多いのは、朝は血圧が上がるため血管内のプラークが破れて血栓ができやすいからです。夕方に心筋梗塞が多い理由はわかっていません。季節にも偏りがあり、やはり血圧が高くなる冬が危険です。
さて、ここまで、心血管疾患で危険な4つの症状をご紹介してきました。運動能力の低下、失神、むくみ、広範囲の鈍い胸痛です。
これまでお伝えしたように心血管疾患では必ずしも症状と疾患(病気)はセットではないのですが、ご紹介した症状については多くの場合、失神・むくみ・胸痛の原因として、それぞれ不整脈・慢性心不全・冠動脈疾患が考えられます。そして、運動能力の低下はこれら3つのいずれの場合でも現れる症状です。
複雑なイメージがある心臓病ですが、皆さんが知っておくべき重大な病気は、大まかにはこれら3つだけなのです。症状と一緒に上図にまとめたので、ぜひ復習してください。
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KEYWORDS:
『心臓・血管の病気にならない本』
著者:山下武志
日本人の半数は心血管疾患で亡くなっている!
血液を綺麗にし、心臓を鍛えて、健康に長生きする方法とは?
日本人の死因2位・3位※を占める心疾患と脳血管疾患は、両者を足すと死因1位のガンに匹敵します。また日本人の9割は不整脈を患っているともいわれています。
しかし、心臓や血管の病気はガンとは異なりメディアの注目度は低く、一般の人々の知識は驚くほど不正確です。著者はかねてよりその状況を憂い、正しい知識の普及に務めてきました。「心臓と血管の病気は慢性病」「年間2万人が命を落とす危険な不整脈=心室細動」など、「長生きして健康でいる」ために欠かせない、おだやかな血液と余裕のある心臓を作る習慣を伝授します。
著者は日本一の「不整脈」の名医と言われ、これまでテレビ『NHK健康チャンネル』や『世界一受けたい授業』など多数のメディアに出演しています。
※2017年度・厚生労働省調べ
目次
第1章 心臓・血管の病気は怖くない
第2章 心臓・血管の病気はこうして起こる
第3章 誰も知らない不整脈の真実
第4章 余裕のある心臓とおだやかな血液を手に入れる
第5章 心臓・血管の治療を成功させる