【リスクと向き合う】投資はドーピング! 年金問題の「盲点」は世界最大の機関投資家「GPIF」
元・野村投信ファンドマネージャーの警鐘・金融資産が消滅する! 第1回
◼️金融リテラシーを向上させるために最も重要なこと
しかし、株式投資やFX(外国為替証拠金取引)、仮想通貨取引などを繰り返しても「金融リテラシー」の向上は望めません。それは、これらは「金融取引」ではなく「相場取引」だからです。私はこの「金融取引」と「相場取引」を同一視するかのような風潮こそが、日本の金融リテラシー向上を阻む大きな要因の一つだと思っています。
「金融」は読んで字の如く「お金を融通する」こと、つまりお金を貸し借りすることです。 したがって、「金融」で最も重要な要素は「金利」と「契約」なのです。日常生活の中でもお金の貸し借りをする際に「利息は?」「契約書は?」と確認するのが一般的です。
ですから、金融リテラシーを向上させるためには、「金利」と「契約」に対する知識と認識を高める必要があるのです。 日本で同じような投資詐欺事件が起きるのも、この「金融」において最も重要な「契約」 に対する認識が極めて希薄なためです。「金利」に対する知識と認識というと難しく感じるかもしれませんが、「その国で最も低いリスクで得られるリターンは国債利回りである」という「金利の常識」を持つということが最も重要なところです。
この認識さえ持っていれば、ゼロ金利下で国債利回りよりず っと高い運用利回り(期待リターン)の商品を紹介された際に、「この高い利回りは何のリスクを取ることの代償なのか」という疑問が湧いてきて当然のはずです。
◼️「預金金利がゼロだから投資」は危険
国債利回りよりも高い利回り(期待リターン)を得られる商品が全て怪しいという訳ではありません。しかし、国債とは異なったリスクを内包していることには間違いありませんので、投資家は高い期待リターンの代償がどんなリスクなのかを確認するのが当然です。 さらにいえば、自分がどんなリスクを取るのかが分からないような投資は行うべきではないということです。
それは、その投資商品がいかがわしいものだということではなく、その投資商品に投資するほどまで自分の投資に対する理解力が高まっていないということです。 株式投資によって国債利回りより高いリターンを目指すのであれば「価格変動リスク」「企業業績リスク」などを負いますし、さらにTOPIX(東証株価指数)を上回るリターンを謳ったアクティブ投資信託ならばさらに「流動性リスク」や「信用リスク」などのリスクを取ることになるということです。
ゼロ金利政策が長期化し、国債利回りが0%、あるいはマイナス利回りになってしまったことで、こうしたリスクの確認が極めてルーズになってきているように思います。「預金金利がゼロだから投資」という「でもしか思考」では、金融リテラシーが向上することはありません。
◼️あなたの投資はドーピングと同じ発想になっていないか?
資産形成は長い時間をかけて「金利」と「信用」を積み上げていくのが基本です。しかし、「金利」がゼロになってしまったことで、「時間」をかけてもそれによって得られるリターンがないので、「時間」をかけずに、言い換えれば努力をせずに簡単にリターンを上げたがる傾向が強まっているようで不安を感じています。
本来「時間」をかけて手に入れるべきリターンを「時間」をかけずにFXや仮想通貨への投資によって短期間で得るというのは、ドーピングと同じ発想です。投資はスポーツではありませんから、ドーピングが悪いわけではありません。しかし、ドーピングで得られたリターンでは社会的な「信用」を積み上げることはできませんから、資金調達能力は向上しないのです。
◼️老後に資産が必要といわれる理由
老後に資産が必要だといわれているのは、労働によるキャッシュフローの獲得が難しくなるからです。ですから若いうちに資産を蓄えて、老後のキャッシュフロー獲得手段を確保していくこと求められるわけです。換言すれば、資産が金融資産である必要はなく、年齢に関係なくキャッシュフローを得られるような知識や技術、スキルという資産を身に付けていけばいいということでもあります。
ゼロ金利時代の今、「貯金」などで資産形成をするのは極めて難しくなっていることは事実です。しかし、「預金」によって「資産」は作れなくても「信用」を作ることはできるということをまず考えて、老後に自分が必要な資産が何かを考えていただけたらと思い ます。老後に必要なキャッシュフローを得る手段は、金融資産の取崩しだけではないのですから。
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KEYWORDS:
『202X 金融資産消滅』
近藤駿介著
アベノミクスを支えた世界最大の機関投資家GPIFの日本株離れが始まる。
個人の金融資産のメルトダウンをどう乗り切るか!?
元野村投信のプロ・ファンドマネージャー、現・金融経済評論家、コラムニストの著者がアベノミクス後にやってくる日本経済の危機に警鐘を鳴らす。アベノミクスを日銀とともに支えた世界最大の機関投資家GPIFが、安倍政権退陣後に日本株の売り手に転じることから株価が暴落し、日本人の金融資産や年金が大幅に目減りする。早ければ2020年代前半に始まる日本経済の長期低迷への備えを提案する。著者は東洋経済、ダイヤモンド、ブロゴスへの寄稿や、MXテレビ「WORLD MARKETZ」のレギュラーコメンテーターを務めるなど、さまざまな経済メディアで活躍中です。
内容
第1章 作り出されたアベノミクス相場
第2章 世界最大の機関投資家GPIFとは何だ
第3章 GPIFの運用の問題点
第4章 早ければ2020年からGPIFは売手に回る?
第5章 投資の常識は非常識
第6章 「世界最大の売手」が出現する中での資産形成