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教育実習か就活か…未来の教師候補たちが「究極の選択」を迫られている

【第14回】学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■教職の「人気」は本当に低下しているのか? 

 教員という職業の人気低下が話題になっている。採用試験の競争率低下が、「教員の質」の低下になると危機感を煽る論調もある。

 そうした中、給特法の改正では、公立学校教員の超過勤務(残業)の上限時間を「月45時間」とした文科省のガイドラインを「指針」へと格上げしている。学校の「ブラック化」が喧伝される状況の中、規則を強めたことで教職の人気低下にも対応したつもりなのかもしれない。
 しかし、上限を設けたところで業務内容が変化しなければ意味はない。上限規制を守るために職員室の電気を消されてしまい、終わらない仕事を抱えて彷徨う教員の姿が現実のものになりつつあるのだ。

 教員採用試験の倍率が低下しているのは事実である。2019年12月23日に文科省の調査が公表されているが、2019年度採用の公立の教員採用試験での競争率は過去最低の2.8倍であり、受験者数も前年度比で約3,500人減であった。この数字だけみれば、たしかに人気が低迷していると言える。
 しかし、単純に「人気低下」という言葉で済ませるわけにはいかない事情もある。
 教員採用試験を受けるためには、当然ながら教員免許を取得しておかなければならない。そのために学生は、一般的に小学校で4週間、中学校で3週間、高等学校で2週間の教育実習をこなさなければならないのだが、これがクセモノらしいである。
 

■教育実習に出てしまえば十分な就活は難しい

教育実習と就活の時期が重なってしまうことが多いんです。だから学生は、教育実習か就活化を選ばなければならない』

 これは、ある大学生の言葉だが、それが現状だ。
 就活では100社以上を受験する「猛者」も少なくない。採用の確率を高くするには、できるだけ多くを受験しておこうというわけだ。そうなってくると、時間との戦いとなる。1日に何社もかけもちで、会社訪問したり面接を受けたりなんてことも珍しいことではない。
 それが教育実習の時期と重なるとなれば、まさに「地獄」となる。教育実習をこなしながら企業の採用面接を受けることは不可能であり、採用面接のために教育実習中の学校を抜け出すなど、許されるはずがない。

 つまり、教員免許を取得するために就活をあきらめるか、就活を優先するために教員免許をあきらめるか…そのような選択を迫られる学生は少なくない。
 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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