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教育実習か就活か…未来の教師候補たちが「究極の選択」を迫られている

【第14回】学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■熱き未来の教員志望者は定員の2.8倍“も”いる

 その結果、教員免許取得を選択し、就活をあきらめた学生もいる。そうした学生が、教員採用試験を受けるわけだ。過去最低とはいえ競争率2.8倍の試験に臨むわけで、これは大きな「賭け」である

 そうした状況を無視して、「競争率が低下して質が下がる」といった意見は、あまりにも失礼な話ではないだろうか。就活よりも教育実習を選び、リスクを取りながらも教員という職業に就きたいと望む若者が、採用定員の2.8倍もいるのだ。教育実習ではなく就活を選んで100社も受ければ、それだけ就職の可能性は高くなる。そうではなく2.8倍に挑戦する若者がいるのだから、むしろ驚くべきことではないだろうか。

 それにもかかわらず、給特法の改正でも「定額働かせ放題」に変化はなかった。仕事は減らさずに、出勤・退勤の時間は厳しく管理すると宣言している。ブラックだから教職人気は落ちると言いながら、本気でブラック化を改める気配はないのである。まるで、やる気のある若者をどんどん潰そうとしているかのようである。

 そして経団連(日本経済団体連合会)をはじめとする経済界は、「インターン制度」や「通年採用」を強化することで、さらに学生を就活に駆り出そうとしている。年中、就活に追われることになれば、もはや教育実習どころではなくなるだろう。教育実習よりも就活に時間を費やしたほうが、就職できるチャンスが増えるからだ。

 それでも教職については、「競争率を上げよ」との声ばかりが目立ってきているのだ。つまり就活はさせないし、門も狭くしろ、というわけだ

 給特法、それに続く人材確保法(人確法)でも、優遇することで教員を志望する若者を増やすことが根底にあった。しかし法律は残っているものの、その根底にあったものは忘れ去られてしまっている。就活を優先させれば教育実習を見送るしかない状況は野放しにされ、その状況はさらに悪化しようとしている。本気で、教員を育てる気があるのだろうか。

『(文科省の)担当者は『低倍率が続けば、教員の質の低下につながりかねない』と危機感を強める(『朝日新聞』2019年12月23日付)』というが、それなら根本的なところから考えなおしていくべきではないだろうか。「低倍率」を連呼して、危機感を煽ってみたところで、教員志望者が増えるわけではないことに気づいてほしいものだ。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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