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新型コロナウイルス危機があらわにした日本人の「子ども嫌悪」

大人と子どもの家庭空間での共存ノウハウはまだまだ十分には蓄積されていない

■親の本音は、子どもと常にいっしょにいたくはない

 今回の臨時一斉休校ショックによって、あらためてわかったのは、日本の小学校のデイケアセンター化だけではない。実は、日本の親は、ほんとうは「子ども嫌い」であるということも、あらわにされたのではないか。

「わあ!3月まるまる学校が休みだって!良かったあ!義務教育だから、どうしても小学校に行かなきゃいけないから、しかたないから行かしてるんだけど、ほんとは自分でいろいろ教えたいのよ。日本の学校なんかにいると、悪い頭がもっと悪くなりそうじゃないの。まずは、料理の特訓から始めるわ!」と、喜んでいる母親の話は、私が知る限り耳にしない。

 里親制度や特別養子縁組制度を活用し、「親業」を積極的に引き受けることを志す人々とは違い、日本のかなりの親は、成り行き上しかたなく親になった。「できちゃった婚」という言葉ができて久しい。「できちゃったから、結婚して、産みましょうか」の事例は少なくない。

 子どもが生まれても、家計が苦しいので働きたいし、社会参加もしたいが、子どもを預かってくれる保育園がない。「保育園落ちた、日本死ね」と訴える匿名ブログに多くの親が共感するほど、保育園は足りず待機児童は多い。

 その状況には大いに同情するが、私は同時に、どうも親の多くは、経済的理由もさることながら、子どもといつもいるのが嫌なのであって、子どもを誰かに託して自由になれる時間が欲しいからこそ保育園を必要としているのではないかと思っている。

 私はそれを批判しているのではない。それは無理もないと思う。まともな大人がワンオペ育児など24時間していたら気が狂う。子どもは、親に24時間以上の労働を強いる。ひっきりなしに泣き要求する。

 今は、少なく産み、エネルギーと金を注ぎ「失敗しない子育て」をしなければならない。就学前にひと通りのことは自分でできるようにしておかなければならない。読み書き計算にアルファベットと簡単な英語表現くらいはできるようにしておかねばならない。いじめのターゲットにならないように、不登校にならないように、引きこもりにならないように、ニートにならないように、気をつけるべきことは山ほどある。

 そのプレッシャーは、特に母親に重くのしかかる。だからといって、厳しく躾ければ、虐待と間違われる。父親のほうは、概して当事者意識が薄い。妻が子どもの世話ばかりするということで、子どもに嫉妬する馬鹿もいる。

 子どもは、この世の光だ。ほんとうは、仕事などせずに、子どもといっしょにいたい?子どもとともに過ごす時間を大切にしたい?

 そのわりには、仕事を辞めるなり、セーブして、貧乏でもいいから子どもと過ごそうとする親は少ないようだ。

 もう素直に認めましょう。母親も父親も、子どもと離れていることができる自由な時間が欲しいのだと。賃金労働のない週末こそ、保育園に預かってもらいたいのだと。できれば、育児の厄介な部分は外注して、楽しい部分だけ味わいたいのだと。

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課 程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。  

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