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日本一の誉れ高い観光列車「雪月花」に乗る

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 いつしか列車の始発駅上越妙高を通過。高原から平地に降りるとみぞれはやんでいた。高田駅を通過し、春日山駅付近では上杉謙信ゆかりの春日山城址が西側に見える。アテンダントさんのアナウンスで教えてもらった。
 直江津駅では14分停車。全国に4駅しかない駅弁の立ち売りを見学したけれど、豪華なランチを食べ終わったばかりだったので食指が動かなかった。それよりも1899年に設置された線路のゼロキロポストとその記念パネルが気になった。

日本海の車窓

 直江津からは進行方向が再び変わり、展望ハイデッキ席は最後尾となる。今度は旧北陸本線(現在はえちごトキめき鉄道日本海ひすいライン)を西に向かう。山が海に迫った難所でたびたび土砂崩れなどの災害に見舞われた区間も長大トンネルの完成で安全に走行できることになった。そのため移転した駅もあり、中でも筒石駅は長さ11㎞あまりの頸城トンネルの中にある特異な駅として知られる。いわゆる秘境駅のひとつだ。

トンネルの中にある筒石駅で停車

 「雪月花」は、この駅で10分停車する。駅入口までは階段しかなく、それも280段(下りホームからは290段)を上って降りるには10分では足りないので、車掌さんの先導のもと、途中の踊り場までで折り返し、ユニークな構造の駅を少しだけ体感できた。

デザートで仕上げ

 筒石駅からはいよいよ最後のコースだ。デザートと紅茶をいただき、最後はお土産まで渡してもらっているうちに、列車はいくつもの長いトンネルをすべて抜け、糸魚川駅の手前では直流区間から交流区間へのデッドセクションを通過すると、糸魚川駅のホームに滑り込んでいった。

 3時間の旅は終わってみればあっという間だった。食事もさることながら、様々なおもてなしや停車駅でのミニツアーもあり、盛沢山なメニューに大満足。車窓も、山あり、渓谷あり、海ありと変化に富んでいて、大いに楽しめた。上越妙高駅から糸魚川駅までは、北陸新幹線なら僅か12分で行ける距離ではあるけれど、回り道や長時間停車を繰り返しながらおよそ3時間かけて鉄道旅を楽しむのは、速さだけの新幹線では味わえない旅の魅力が数えきれないくらい詰まっていることの証でもある。豪華で心地よい車両も、旅の魅力のひとつであることは言うまでもない。100種類ほどあると言われている全国の観光列車の中で、トップランクの列車、それが「えちごトキめきリゾート雪月花」なのである。

取材協力=えちごトキめき鉄道

 *「雪月花」詳細は公式サイトで

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野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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