複利と長期投資の破壊力【令和の億り人が静かに教える】若者にこそ知ってほしい「資本主義」のしくみ④ |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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複利と長期投資の破壊力【令和の億り人が静かに教える】若者にこそ知ってほしい「資本主義」のしくみ④

◆お金も事業も「雪だるま」式成長を!

 私の哲学は、人生も投資もビジネスも、全てはマラソンだということです。マラソンで大切なことは一定のペースを保つこと。一時的に速度を上げれば、その分早く前進することが可能になるわけですが、その代償は意外に高くつきます。潜在能力以上の速度は、身体のどこかに過度な負担を生み、完走すら危うくさせるのです。

 私の哲学は、人生も投資もビジネスも、全てはマラソンだということです。マラソンで大切なことは一定のペースを保つこと。一時的に速度を上げれば、その分早く前進することが可能になるわけですが、その代償は意外に高くつきます。潜在能力以上の速度は、身体のどこかに過度な負担を生み、完走すら危うくさせるのです。

 私は今まで、人に言えないような、様々な失敗をしてきました。

 失業中に、株式投資だけで生活資金を稼ごうとして、ほぼすべての資金を失ったことがあります。常識外れの利回りに正気を失い、多額の資金を詐欺で奪われたこともあります。

 投資には適正な利回りがあります。債券なら年利で2~8%、不動産なら5~10%、株式なら10~20%。事業なら20~50%程度でしょうか。それ以下では魅力に欠けますし、それ以上の利回りは、結局損失を生むと考えたほうが良いと思います。

 短期の株式投資がまさにその典型です。短期投資は大きなリターンが魅力です。しかし短期の株式投資はゼロサムゲーム。短期では全体の富は増えません。誰かの利益の裏には、別の誰かの同額の損失がある、それがゼロサムゲームです。ゼロサムゲームの中でプロの投資家にあなたが勝てる可能性など、まずありません。

 事業も同じです。経営者は、会社を急速に大きくしたいという誘惑にとても弱い存在です。

 台湾での事業が軌道にのり、多店舗展開に取り組み始めた当初の私がまさにそうでした。前回の連載でも触れましたが、私は2006年から2018年までの12年間、台湾のレストラン企業の経営者を務めておりました。2012年から2014年までの3年間、わが社は毎年平均で売上高ベース150%の成長を成し遂げました。私は有頂天でした。事前の計画では、売上の上昇にあわせて利益も同様の成長を実現する予定でした。
しかし、利益は計画を大幅に下回りました。多くの従業員が疲弊し、複数の幹部従業員から辞表を出されたとき、私はようやく正気に戻りました。人は単に忙しいだけでは疲弊しません。忙しさの中で仕事の効率が低下し、努力に相応しい成果が得られないとき、人は疲弊し、会社は荒廃します。
この経験から私は大きな教訓を得ました。お金も事業も、雪だるまをつくるときの要領で大きくしていくのです。最初は少しずつ丁寧に芯となる「真球」を作り、それを一定のスピードで丁寧にゆっくりと回していく。焦りは禁物です。年月を経るうちに、それは「複利と長期投資の力」によって驚くほど早く、大きく成長していきます。

 私は台湾での経営者時代、約12年間で会社の売上高と純利益をともに約20倍に成長させることが出来ました。12年で20倍と聞くと、多くの人々が驚きます。しかし年間の成長率に直せば、128%程度です。3店舗のレストランが、1年間で1店舗新規出店すれば達成できる成長率です。成長期のスタートアップ企業であれば、決して高い成長率ではありません。

 若者の皆さんに伝えたいことはまさにここにあります。皆さんの資金は僅かかもしれません。しかし皆さんには、「時間」という最強の武器があります。だからこそ、まずは真球をつくることです。無理せずに毎月一定額を積み立て投資するためにはどうすべきか、考えて欲しいと思います。無理に出費を切り詰める必要はありません。そんなことをすると続きませんから。
あなたが経営者なら、焦らず自らの会社自体に目を向けることです。従業員がやりがいをもって働けけているか、従業員同士の仕事がきちんとかみ合っているか、そんな当たり前のことを大切にすべきです。そして会社を愛しみ、真球になるように磨き上げることです。成長は後から勝手についてくるはずです。(つづく)

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鈴木 烈

すずき れつ

1973年生まれ、47歳。早稲田大学法学部卒業。八千代投資株式会社代表。台湾および中国で約50店舗(2018年離職当時)のレストランを運営する、乾杯股份有限公司の元CEO。在職12年で売上と利益を約20倍に増やし、2016年にはCEOとして台湾の新興企業市場で店頭公開を達成。その後2019年に帰国。現在は、前職で得た資金と人脈で投資業を営む。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程在籍。

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