東日本大震災、激痩せ、セクハラ、母の死。浅田真央『世界フィギュア2011』の苦闘
もう一度、人生があれば、スケートの道には行かない
■東日本大震災発生時以来の『世界フィギュア』中止で思い出す
カナダのモントリオールで予定されていたフィギュアスケートの世界選手権(世界フィギュア)が、パンデミックの影響で中止になった。今後の状況次第で年内の開催を模索するというが、シーズンの締めくくりというかたちではなくなりそうだ。羽生結弦や宇野昌磨、紀平梨花や宮原知子といった日本人選手の活躍を楽しみにしていたファンにとっても、残念なことだろう。
世界フィギュアが中止になったのは9年ぶりで、そのときは東京で3月下旬に行なわれるはずだった。しかし、直前に東日本大震災が起き、モスクワを代替地にして1ヵ月後に開催された。
日本勢では女子シングルで安藤美姫が優勝、男子シングルで小塚祟彦が2位になった。先日、心臓発作で急逝したアイスダンスのクリス・リードもキャシー・リードと組んで13位と健闘している。ただ、この大会で最も印象的だったのは浅田真央の不調かもしれない。
前年に続き、女子シングルの連覇、通算3度目の優勝を目指したものの、結果は6位。彼女の不調といえば、ソチ五輪(14年)でのショートプログラムも思い出されるが、このときはフリーで巻き返した(ちなみに、直後の世界フィギュアでは3度目の優勝を飾っている)。しかし、この大会ではショート・フリーともに精彩を欠き、その原因がさまざまに取り沙汰されたものだ。
そのなかには、タレントのラサール石井がツイッターで発したこんな指摘もあった。
「ちょっと暴言吐きます。浅田真央ちゃんは早く彼氏を作るべき。エッチしなきゃミキティやキムヨナには勝てないよ。棒っ切れが滑ってるみたい。女になって表現力を身に付けて欲しい。オリンピックまでにガッツリとことん!これは大事」
さらに彼は「恋愛もSEXも人間には欠くべからざる行為だ。そういった日常の発露としてアートやスポーツもあるものだと私は思っているからだ」とも述べた。ただ、この指摘はあまり支持されず、セクハラだと見なす声も多く出て、炎上。彼は謝罪して、ツイートを削除することになる。
それでも、この大会の彼女がいつもより痩せていたのは事実だ。スポーツ紙には「ベストより4.5キロ減」と報じられた。現役時代のデータでは、163センチ47キロとあるので、42.5キロくらいになっていたわけだ。競技中の外見も後ろ姿に背骨が目立ち、そこがラサールのようなオヤジ目線を持つ者には「棒っ切れ」と映ったのだろう。
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『痩せ姫 生きづらさの果てに』
エフ=宝泉薫 (著)
女性が「細さ」にこだわる本当の理由とは?
人類の進化のスピードより、ずっと速く進んでしまう時代に命がけで追いすがる「未来のイヴ」たちの記憶
————中野信子(脳科学者・医学博士)推薦
瘦せることがすべて、そんな生き方もあっていい。居場所なき少数派のためのサンクチュアリがここにある。
健康至上主義的現代の奇書にして、食と性が大混乱をきたした新たな時代のバイブル。
摂食障害。この病気はときに「緩慢なる自殺」だともいわれます。それはたしかに、ひとつの傾向を言い当てているでしょう。食事を制限したり、排出したりして、どんどん瘦せていく、あるいは、瘦せすぎで居続けようとする場合はもとより、たとえ瘦せていなくても、嘔吐や下剤への依存がひどい場合などは、自ら死に近づこうとしているように見えてもおかしくはありません。しかし、こんな見方もできます。
瘦せ姫は「死なない」ために、病んでいるのではないかと。今すぐにでも死んでしまいたいほど、つらい状況のなかで、なんとか生き延びるために「瘦せること」を選んでいる、というところもあると思うのです。
(「まえがき」より)