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一斉休校と学校再開であぶり出された教育現場への過剰な依存

【第20回】学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■一斉休校中の教員と子どもたち

 一斉休校になっても、学校と子どもたちの関係が切れたわけではない。子どもたちが登校しないのだから、「先生たちはヒマだろう」という声もあるようだが、とんでもない勘違いである。実際には、休校になって教員はいっそう多忙になったのだ。前出の『論座』において住田校長は、次のように書いている。

 「休校当初は、時間に関係なく次々と送られてくる文部科学省や教育委員会のメールに対応し、保護者への連絡を繰り返し行いました。また、年度末評価や通知表・指導要録の作成、新年度の学級編制作業、学年末の引き継ぎ等の年度末業務、卒業式の準備や計画の見直しと修正、家庭での健康状況の確認のための家庭訪問、プリントの作成、特別な配慮が必要な子どもや家庭への支援、低学年・特別支援級の緊急受け入れ等、予測困難な状況での対応に追われていました」

 休校になっているにもかかわらず、子どもたちのケアは教員に任されたままなのだ。そのために家庭訪問をしなければならないのだから、それにかける時間も労力も想像以上である。住田氏は、次のように続ける。

 「家庭訪問することについても賛否両論ありましたが、家庭訪問では、『先生!つまんな~い!』とモニター越しに呟く子どもや、毎日夜遅くまでゲームをやってしまって今日も今起きた!という子もいたそうです。一人っ子など、ずっと一人で留守番することでストレスが溜まっていると言っていたそうです。先生の声を聞いて『久しぶりに家族以外と話した』とか『外に出てみようと思うようになった』という子もいたそうです。兄弟がいる子は、喧嘩が増えたとも言っていました」

■無意識にできあがった学校と教員への過剰な依存

 これだけでも、学校や教員の存在がなければ子どもたちの生活が成り立たないだろうことが想像できる。学校が休校になれば、親の生活も会社も成り立たない。社会が成り立たないわけだ。

 しかし、ここまで学校と教員が依存されている状態は正常といえるのだろうか。学校は勉強するところであり、教員は勉強を教えるのが仕事だ、とはよく言われることだ。しかし、住田氏の記事を読むだけでも、すでにこの範疇を超えている。子どもたちの健康管理をし、精神的なケアまでを行っている。「新型コロナウイルス感染症での休校という非常事態だから」という見方をする人もいるかもしれないが、そんなことはない。これが学校の、教員の日常なのである。

 子どもたちが登校してから下校するまで、学校と教員は面倒をみている。勉強だけでなく、挨拶の仕方から、廊下の歩き方、給食の食べ方、生活態度まで、ありとあらゆる世話を学校と教員が引き受けている。それを、親も当然のように考えている。だから、「勉強するように言ってください」とか「喧嘩しているので相手を叱ってください」と教員に依頼する。「うちの子が乱暴なのは学校や教員が悪いからでしょう」と、言いがかりをつけられることも珍しくない。それでも学校や教員は、ありとあらゆることを引き受けているのである

 これでは、教員が多忙でない方が不思議である。1人や2人の子の面倒をみているわけではなく、担任は40人もの子の面倒を押し付けられている。肉体的にも精神的にも多忙を極め、疲労困憊してしまうのも当然である。そうやって子どもたちの勉強から生活までを引き受けていることで、親たちは仕事に専念することができる。親も会社も、学校や教員に依存することで社会が成り立っているのだ。今回の新型コロナウイルス感染症拡大防止のための休校は、そのことを「あぶり出した」のである。

 依存している親や会社、社会だけに問題があるわけではない。依存させている学校や教員にも問題がある、と言わざるをえない。しかし、この依存関係を続ける以上は教育現場における働き方改革は進まないのかもしれない。しかも、学校再開となればこの依存傾向はより強くなることが容易に想像できる。
新型コロナウイルス感染症による一斉休校、そして学校再開はこの過剰な依存関係改善のきっかけになるのだろうか。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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