「自分の仕事の相場を決めるにはどうしたらいいのか?」【あんちょこ通信6】角田陽一郎×加藤昌治 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「自分の仕事の相場を決めるにはどうしたらいいのか?」【あんちょこ通信6】角田陽一郎×加藤昌治

あんちょこ通信 第6回

■「知ったもん負けの法則」を活用しよう

 

加藤:あんちょこ的な回答になるけれど、個人的に「知ったもん負けの法則」ということを云ってるんです。

 書籍とかが好い例なんですけど、本を書くと、それを読んでくれる読者の人がいますよね。その読者の方と初めてお会いした時には、一番分かりやすいフレーズで云うと「読みました」ってなるわけです。で、そこでちょこっと関係性が決まってしまうんですね。

 名刺交換する時って、なんとなく目上の人は名刺を上から、そうじゃない人は下から出す空気があるけれど、本を読んでくれた方とのやりとりでは、読者の方が「下から名刺を出す」側になる感じがあるんですよ。これを「知ったもん負けの法則」と呼んでるんです。

 

角田:なるほどね。

 

加藤:その時に「知ったもん負け」というのは「知られたもん勝ち」ではないんです。

 要は、知られている側が上がるんじゃなくて、相手のことを知っている側が下がっていくんです。

 初めて会う相手の場合、お互いに対して、知っている情報の量がそれぞれありますよね。

 「読者と会います」という時、著者である私は読者であるその方のことはまだ知らないわけです。お互いに会ったことがないわけですから。

 でも読者のほうは本を読んでる分私のことを知っている。特にこの『仕事人生あんちょこ辞典』は750ページあるから、まあ全部読んだとして750ページ分、読んでもらったとすると400分くらいの時間がかかる、それだけこちらのことをご存じなわけですよ。

 

角田:そうか、相手はこっちを知ってるんだ。

 

加藤:そうすると、情報を知ってる人のほうがむしろ恐縮しちゃう、みたいなことがあるんですよね。

 

角田:ああ、なるほどね。

 

加藤:それがそのまま請求額や見積額に直結するかは別だけど、初めて会う前に、自分について多くのことを相手が知っている状況を作れるかどうかは、結構ポイントなんじゃないかな。「有名人」って要はそういうことでしょう。

 

角田:皆が知ってるからね。

 

加藤:そういう状況を作れると、さっき角田くんが言ってたことに近い、同じアウトプットでも安く感じられるようなことが起こりやすくなんじゃないかな。

 

角田:僕のことを知らないクライアントのところに行くとすごく冷たくされることとかあるんだよね。

 

加藤:そういうこと。相手が角田くんのことを「知ってない」から角田くんに「負けない」んだよ。

 

角田:そうなんだよね。ああいう態度って腹が立つんだけどそういう時に、僕の名刺って裏側にこれまでやった番組やら本やらなんやら死ぬほどの情報量を書いてるじゃないですか。

それを打ち合わせの間に向こうもチラッと見ると、「金スマ」とか書いてあるのを見るのかな? 10分ぐらい後に態度がコロッと変わることがあるんだよね。

 

加藤:それが「知ったもん負け」。

 

角田:そういうことだね。その人はその10分で僕のことを知ったんだね。

 

加藤:もちろん始めてお会いして普通に話した後は、それぞれきちんと相手をリスぺクトし合えばいいと思うけど、「最初の出会い」で云えば、嫌らしい云い方だけど「知ったもん負け」の状況を作ることはある程度可能じゃないですか。

 

角田:うんうん。

 

加藤:「本」というのも分かりやすいし、角田くんの名刺の裏のような実績集みたいなものも、「会って見せる」ではなくて、会う前に実績が見えた状態になっているとより良いのかな、とか。

 少しでも「知ったもん負け」の状況を作れると、自分に対して値付けをする時に少し楽になるんじゃないかな。

 

角田:そうすると、少なくとも向こうが下手に出る可能性が高まる、と。

 

加藤:その時に、「ただ知ってるだけ」というのでもよくないね。そこにリスぺクトが無ければ、ただ「はあ、なるほど」で終わっちゃうわけだから。

 結局、「自分の仕事がどれだけその人にとって魅力的か」を前もって見せていくことは必要ですよね。

 

次のページ結果だけではなく、そこまでの過程をどう見せるか

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角田 陽一郎/加藤 昌治

かくた よういちろう かとう まさはる

角田 陽一郎(かくた・よういちろう)

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者 

千葉県出身。千葉県立千葉髙等学校、東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社を設立(取締役 ~2013年)。2016年TBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出、「ACC CMフェスティバル」インタラクティブ部門審査員(2014、15年)、SBP高校生交流フェア審査員(2017年~)、その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院にて文化資源学を研究中。著書に『読書をプロデュース』『最速で身につく世界史』『最速で身につく日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』『人生が変わるすごい地理』『運の技術』『出世のススメ』、小説『AP』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。好きな音楽は、ムーンライダーズ、岡村靖幸、ガガガSP。好きな作家は、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、司馬遼太郎。好きな画家は、サルバドール・ダリ。

                                                             

加藤 昌治(かとう・まさはる)

作家/広告会社勤務

大阪府出身。千葉県立千葉髙等学校卒。1994年大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(CCCメディアハウス、2003年)、『発想法の使い方』(日経文庫、2015年)、『チームで考える「アイデア会議」考具応用編』(CCCメディアハウス、2017年)、『アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編』(CCCメディアハウス、2017年)、ナビゲーターを務めた『アイデア・バイブル』(ダイヤモンド社、2012年)がある。           

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