長旅で疲弊したロシア艦隊
戦う前からハンディを背負う
日本海海戦と東郷平八郎 第3回
この間、旅順港内の艦隊は壊滅、守備隊も降伏していた。ロジェストウェンスキーは精鋭部隊だけでウラジオストックへ向かわせてくれるように本国へ要請したが、ニコライ2世は「増援部隊を待って日本艦隊を殲滅せよ」と命じた。
増援部隊といってもバルト海に残っているのは老朽艦である。黒海艦隊はイギリスの圧力で遠征ができない。艦隊内では熱帯独特の気候で伝染病や野菜不足による壊血病が蔓延している。将兵の間に厭戦気分が広がった。
増援部隊の第3太平洋艦隊は2月16日、リバウ港を出港。待ちくたびれた第2太平洋艦隊は3月16日、ノシベ島を後にした。艦底には牡蠣殻やフジツボなどが付着し、航行の妨げとなった。
両艦隊はフランス領インドシナ(現・ベトナム)で合流。5月14日、史上最大の艦隊は北上を開始したが、これまでの長旅で疲弊しきっており、戦う前から大きなハンディを背負っていた。