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「サウジアラビア人と結婚した妙齢の美女の悩みに答える」の巻【中田考のレンタルおじさん】

中田考「レンタルおじさん、始めました」連載第4回

■日本でイスラムの価値観を持つこと

 

依頼者:ムスリムとの結婚だったので私自身は特に何の抵抗もなく改宗したんですが、周囲からはあまり良い反応をされず、なんとなくヤバい宗教にハマっているとかそんな風に思われているようなんですよね(笑)。

 

中田:日本では、普通の人は宗教は必要ない、宗教に入るのはどこかおかしい人、と思われていますからね。それに宗教に入ると、教会のようなところに連れていかれて、寄ってたかって洗脳されて、献金させられて、怪しげなグッズを売りつけられるとか。でもイスラームの場合そんなことぜんぜんないでしょう。

 

中田:ええ、特に女性は普通はモスクにも行かないし。旦那は行ってるのかなぁ。良く知りませんけど。モスクから集金が来たりもしません。無職の旦那に居候されていることぐらいですが、それもイスラームのせいといえばイスラームのせいですけど。

 

中田:いや、本当はイスラームでは妻の生活費を稼ぐのは夫の義務で妻は働かなくていいんですけどね。

 

依頼者:そういうこともあって普段はあまりヒジャブ(頭にかぶるスカーフ)をしたりっていうこともなく周りに溶け込んで仕事をしたり、生活しているんですが、イスラームの価値観を持って日本で暮らす事に息苦しさみたいなものを感じますね。

 

中田:ただでさえ日本はもともと世間の目を気にし、上司に忖度し、友達にもあわせて、そのうえ最近ではSNSの「いいね」にまで一喜一憂しないといけない高ストレス社会です。その上にイスラームの戒律にまで縛られたのではたまったものではありません。

 イスラームの教えで一番大切なのは、親であれ先生であれ社長であれお得意様であれ総理大臣であれ、全宇宙の創造神以外の誰にも従う必要も気を遣う必要もない、神の命令以外に背かない限り何をしようとどう生きようと絶対的に自由だということです。この信仰を体得するまでは、細かい戒律など気にかけても仕方ありません。イスラーム法を守り施行するカリフのいない世界では重要なのは唯一神だけに帰依し拠り頼む信仰であって戒律ではありません。

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中田 考

なかた こう

イスラーム法学者

中田考(なかた・こう)
イスラーム法学者。1960年生まれ。同志社大学客員教授。一神教学際研究センター客員フェロー。83年イスラーム入信。ムスリム名ハサン。灘中学校、灘高等学校卒。早稲田大学政治経済学部中退。東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。カイロ大学大学院哲学科博士課程修了(哲学博士)。クルアーン釈義免状取得、ハナフィー派法学修学免状取得、在サウジアラビア日本国大使館専門調査員、山口大学教育学部助教授、同志社大学神学部教授、日本ムスリム協会理事などを歴任。現在、都内要町のイベントバー「エデン」にて若者の人生相談や最新中東事情、さらには萌え系オタク文学などを講義し、20代の学生から迷える中高年層まで絶大なる支持を得ている。著書に『イスラームの論理』、『イスラーム 生と死と聖戦』、『帝国の復興と啓蒙の未来』、『増補新版 イスラーム法とは何か?』、みんなちがって、みんなダメ 身の程を知る劇薬人生論、『13歳からの世界制服』、『俺の妹がカリフなわけがない!』、『ハサン中田考のマンガでわかるイスラーム入門』など多数。近著の、橋爪大三郎氏との共著『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)がAmazon(中国エリア)売れ筋ランキング第1位(2021.9.20現在)である。

 

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